遺産を1人に相続させたい|遺言書の書き方や注意点は?

「特にお世話になったひとに、すべての財産を残したい」と考えるひとは少なくありません。
しかし遺産を1人に相続させたい場合には、適切な方法で準備しないと、他の相続人との間でトラブルに発展する可能性もあります。
今回は、遺産を特定の1人に相続させるための遺言書の書き方と、注意すべきポイントを解説します。
遺産を1人に相続させる方法
遺産を特定の1人に相続させるには、遺言書が必要です。
遺言書がない場合、遺産は民法に定められた「法定相続分」に基づいて、相続人全員で分けられます。
たとえば配偶者と子ども2人がいる場合、取り分は配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつとなります。
遺言書の書き方・注意点
遺言書は、自分の書きたいように書くと、無効になる可能性があります。
以下のようなポイントを押さえてください。
形式に沿った正しい書き方が必要
遺言は、法的に定められた形式に沿って書く必要があります。
よく使われるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類です。
自筆証書遺言は、本人が全文を自筆で書く形式で、日付と署名・押印が必要です。
最近は法務局での保管制度も整備されました。
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する形式です。
紛失・改ざんのリスクがなく、家庭裁判所の検認も不要と、さまざまなメリットがあります。
「誰に何を渡すか」を具体的に記載する
遺言書を書く際、「長男〇〇に〇〇銀行の預金〇千万円を相続させる」のように、財産の内容と受取人を具体的に記載する必要があります。
「すべての財産を長男に相続させる」としても構いませんが、内容が曖昧だと解釈をめぐって揉めるリスクがあるため、注意が必要です。
また、「なぜこの人に遺産を残すのか」「なぜ他の相続人には渡さないのか」について、簡単な説明文を加えると他の相続人にも納得してもらいやすくなります。
遺留分にも考慮する
法定相続人には「遺留分」という最低限の権利があります。
たとえ遺言で「すべてを1人に渡す」と書いてあっても、他の相続人は一定の割合を請求できる権利です。
遺留分の割合は、以下のようになっています。
- 配偶者や子どもが相続人:法定相続分の1/2が遺留分
- 親のみが相続人:法定相続分の1/3が遺留分
兄弟姉妹には遺留分がありません。
遺言により他の相続人の取り分がゼロになっていた場合、遺留分侵害額請求という手続きを通じて、金銭での補てんを求められる可能性があります。
そのため、遺言書を作成する段階から、トラブルを防ぐ工夫が必要です。
まとめ
遺産を1人に相続させたい場合は、遺言書を作成する必要があります。
遺言書を作る際は、財産の内容や相続させたい相手を具体的に記載してください。
他の相続人の遺留分にも注意し、トラブルを防ぐ工夫もしておくと安心です。
遺言書の作成に関して不安がある場合は、司法書士などの専門家に相談するのもおすすめです。


