飼い主死亡後のペットはどうなる?緊急時の引き取り・相続手続きと安心の対策

愛するペットを飼っている人にとって、「もし自分に万が一のことがあったら、この子はどうなるのか」という不安は、誰もが抱える深刻な問題です。
特に、高齢の飼い主や、一人暮らしの方は、突然の入院や死亡によって、ペットが残されてしまうという事態を現実の問題として考えなければなりません。
今回の記事は、飼い主自身が生前に備えを行うための知識と、飼い主の死後に残された親族、相続人、友人、知人の方々が取るべき、ペットの命を守るための適切な行動と手続き、相談窓口を専門家の視点からわかりやすく解説します。
2026年の最新トレンドや法改正の動向も含め、不安を安心に変えるための情報を網羅しています。
飼い主の死亡後に起きる緊急事態
飼い主の死亡直後は、ペットの「命の安全」を最優先し、直ちに緊急の預かり先を探すことが重要です。
法的な手続きはその後に効率的に行います。
連絡すべき緊急対応の窓口

飼い主の異変に気づいたら、一秒でも早く緊急連絡先に状況を伝えてください。
飼い主が突然亡くなった場合、残されたペットは生命の危機に直面している可能性があります。
最初にすべきは、ペットの現在いる場所を確認し、水と食事を確保することです。
その後、以下の専門窓口に直ちに連絡を取ります。
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かかりつけの動物病院:健康状態の確認と、一時的な預かり相談が可能な場合があります。
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友人、知人、近隣の人:日頃からペットの存在を知っている人に緊急の世話をお願いします。
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地域活動のNPO法人や一般社団法人:犬猫の保護活動を行っている団体の多くは、緊急の一時的な引き取りを有償で対応可能な場所もあります。
ペットの「相続財産」としての扱い
法律上、ペットは「物(動産)」として扱われます。
飼い主の死亡による相続が発生した際、犬や猫といった動物は家や不動産、貯金と同じ「相続財産」の一部となります。
しかし、家族同然のペットを遺産分割の対象とすることは感情的に難しい問題を伴います。
誰が引き取って世話をするかは、相続人間での「遺産分割協議」を経て決めることが基本です。
もし協議が整わない場合、ペットの処遇が宙に浮いてしまうリスクがあり、飼育放棄へと繋がる可能性も出てきます。
注釈1:相続財産(そうぞくざいさん) 亡くなった人(故人)が所有していた、プラスの財産(現金、不動産、動産など)とマイナスの財産(借金、ローンなど)を合わせた全体のことを指します。
飼い主がいない状態を回避する初動

飼い主の孤独死や突然の入院によって、ペットが部屋に取り残される危険性。
飼い主が高齢で入院が長期化したり、身寄りがない人が孤独死したケースでは、ペットが部屋に取り残され、衰弱してしまう危険が高まります。
特に、賃貸の住まいにいる場合は、管理会社や大家さんへの連絡が不可欠です。
発見から数日ででも、ペットの健康状態は急激に悪化するため、この時間的な猶予のなさが最大の問題です。
緊急の際に自宅へ立ち入って一時的に保護できる「見守り」の委任契約を生前に誰かと結んでおくことが、何よりの対策となります。
法的手続きと飼育放棄を避ける知識
ペットの終生飼育は道徳的な義務ですが、法的な仕組みを使わないと飼育放棄の可能性は高まります。
「遺言」か「信託」のどちらかを選択する必要があります。
ペット引き取り手の法的な探し方
飼い主の意思が書面で残されていない場合、親族間で引き取り手を探すことは難しい作業となります。
ペットを引き取らざるを得ない人の多くは、費用の負担と世話の負担に不安を感じています。

資金の負担と世話の義務をセットで引き継ぐ、法的な仕組みを活用しましょう。
これを解決する最も確実な方法は、資金と世話の義務をセットで引き渡してしまう法的な仕組みを利用することです。
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負担付遺贈:遺言書に「財産(お金)を渡す代わりに、ペットの世話をする義務を負ってもらう」と記載します。
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死因贈与契約:生前に契約を結び、飼い主の死亡を条件に財産を贈与します。
遺言書による飼い主の意思実現
遺言書は、飼い主の最後の強い意思を示す書面です。
ペットの新しい飼い主となる人に、終生飼育に必要な資金(飼育費用)を遺贈する旨を明確に記載できます。
公正証書遺言にすることで、内容の確実性が高まり、相続人の間でのトラブルを未然に防ぐことに繋がります。
ただし、遺贈を受けた人が、遺言の通りにペットの世話にお金を使わないリスクも存在するため、信託の制度と比較検討が必要です。
注釈2:負担付遺贈(ふたんつきいぞう) 遺言によって財産を贈与する(遺贈する)代わりに、財産を受け取る人に対して、特定の義務や負担(この場合はペットの終生飼育)を負わせる仕組みです。
遺品整理と心のケア、供養の方法
飼い主の死後、遺品整理と同時に、残されたペットの遺品(おもちゃ、首輪、ベッド)の処遇も問題となります。
遺品整理業者の中には、ペットの遺品に関する専門のサービスを提供している会社もあります。
また、ペット供養は、故人とペットの関係に思いを馳せ、残さされた人の心のケアに繋がる大切な儀式です。
動物愛護団体が主催する合同供養や、専門の寺院への相談も選択肢となります。
飼い主の生前に行う最適な対策
最も安心できる方法は、飼い主が生前に法的な手段で資金の管理と世話の継続をセットで決めておくことです。
その最有力なものが「ペット信託」です。
ペット信託については以下の記事で解説しています。
ペット信託とは?愛する家族の生涯を確実に守る仕組みと費用を解説
高齢の飼い主が備えるべきこと

高齢者とペットの共生には、飼い主自身の健康状態の変化に備えた対策が必須です。
近年、高齢者とペットの共生が社会問題化しています。
飼い主が60代、70代になり、体力的な衰えや、認知症のリスクが高まると、ペットの世話が難しくなる可能性が高まります。
重要な備えとして、以下のものがあげられます。
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エンディングノートへの記載:緊急連絡先、かかりつけ獣医師、ペットの情報(病気、食事、性格)を詳細に書き方を工夫し残す。
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財産の準備:ペットの終生飼育に必要な資金を信託などで隔離し確保する。
入院・認知症に備える「見守り」
飼い主が入院をする際や、認知症などで判断能力が衰えた際に、財産管理や契約行為を代わりに行ってくれる制度が、「任意後見契約」や「財産管理委任契約」です。
これらの契約に、ペットの世話に必要な費用の支払いを追加することで、飼い主が健康なうちからサポート体制を整えることが可能です。
特に、任意後見契約は、家庭裁判所の管理下に置かれるため、より安心です。
ラブポチ信託を活用した仕組み
ペットの終生飼育のための最も確実で安心な方法の一つが、「ラブポチ信託」などのペット信託制度の活用です。
ラブポチ信託は、信託会社が受託者、認定NPO法人ピーサポネットが受益者となり、飼い主の財産(資金)を信託として管理します。
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飼い主(委託者)が、資金を生命保険信託契約により受託者(信託会社)に渡す。
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受託者は、新しい飼い主(ピーサポネット)へ、定期的に飼育費用を給付します。
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ピーサポネットは認定NPO法人として、監督官庁に監督されます。
これに生命保険を連携させる「生命保険信託」の形を取ることで、飼い主の死後、遺産分割を待つことなく、速やかに資金を信託へ移動させることが可能となります。
ラブポチ信託の詳細や評判については、関連記事をご覧ください。
注釈3:任意後見契約(にんいこうけんけいやく) 判断能力が衰える前に、あらかじめ自分が選んだ人(任意後見人)と、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務を委任する契約を結んでおく制度です。
安心できる引き取り先と里親探しの極意
里親探しは、ペットの幸せに直結する行動であり、安心できるNPO法人や団体を通じて、新しい家族を探すのが最も良い方法です。
NPO法人など専門団体への依頼

専門的な知識と連携体制を持つ認定NPO法人への依頼が、終生飼育の成功に繋がります。
飼育放棄を避ける最善の道は、専門の知識と実績を持つ団体に託すことです。
NPO法人や動物愛護団体の多くは、犬猫の種類や年齢、病気の有無に応じた専門知識を持っており、獣医師やトレーナーとの連携体制も整えています。
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メリット:新しい飼い主とのミスマッチが少なく、引き渡し後のサポートも充実しています。
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注意点:NPO法人に依頼する場合、活動資金の一部として「終生飼育費用」の寄付や費用の支払い」が必要となるケースがほとんどです。事前に料金体系を確認しましょう。例えば、ある認定NPO法人では、終生飼育費用として、一律100万円(体重10kg以上の動物は体重×10万円)を目安としています。
一人暮らしの飼い主への後見人設定の推奨
特に一人暮らしでペットを飼育している方、またはこれから飼育したいと考えている方は、後見人の設定が強く推奨されます。
一部の保護団体では、一人暮らしの方からの譲渡申込みに対し、後見人を設定することを条件に許可を出すケースが増えています。
これは、動物たちの命を確実につなぎ、不幸な動物を増やさないための措置です。
後見人を設定することで、飼い主・動物・保護団体の三者が安心できる状態を構築できます。
一人暮らしの方は、ペットを迎える審査に通過するためにも、生前の契約を検討しましょう。
里親探しのステップと成功の秘訣
個人で里親を探す場合は、X(旧Twitter)やペットのおうちなどの里親募集サイトを利用します。
成功の秘訣は、
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情報の詳細化:病気の履歴、性格、食事、問題行動の有無を正直に記載する。
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条件の明確化:「一人暮らし不可」や「高齢者不可」など、譲渡の条件を設定する。
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面談の実施:新しい飼い主と直接会って、実際に話をするることで、信頼関係を築く。
里親との契約は、動物愛護団体などが作成した雛形を利用し、双方の権利と義務を明確に規定する書面を作成することが望まれます。
保健所への引き取りは最終手段
飼い主の死後、親族や相続人がどうしても引き取り手を探すことが難しく、飼育放棄を選ばざるを得ない状況に陥った場合、保健所への引き取り相談が選択肢となります。
しかし、保健所への持ち込みは、殺処分の可能性を含んでいるため、命を守るための行動としては、最終手段と位置づけるべきです。
行政も、2026年以降も、殺処分ゼロを目指すための活動を行っていますが、予算や体制の限界があります。
事前にNPO法人との連携を検討しましょう。
よくある質問と回答(Q&A)
ペットの終生飼育に必要な資金は、ペットの種類や年齢、健康状態により異なるため、専門家との相談で算出する必要があります。
Q.ペットのための資金の相場はいくらですか?

ペットの種類、年齢、健康状態に応じて、終生飼育費用の相場を算出します。
A. ペットの終生飼育に必要な資金は、一般的に犬で数百万円、猫で百万円程度が目安とされます。
内訳としては、毎月の食費や雑費に加え、病気やケガに備える医療費、老犬ホームなどの老後の施設費用が含まれます。
特に老後は病気のリスクが高まるため、ゆとりを持った資金計画を立てることが重要です。
終生飼育の費用計算や対策については、ペット相続士のライセンスを持つ司法書士など、専門の司法書士や弁護士に相談し、個別のケースに合わせた算出を行いましょう。
Q.飼い主の死亡時に起こるトラブル事例は?
A. 飼い主の死亡時に最も多いトラブルは、ペットの所有権を巡る相続人間での争いです。
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財産価値の相違: 「ペット」としての法的な価値と、精神的な価値の相違から、意見の相違が生じます。
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費用の負担の明確化不足: 引き取りを決めた相続人への資金援助が不足し、結果として飼育が続かないケース。
これらの問題は、生前に「誰が財産を管理し、誰がペットの世話をするか」を信託契約で明確に定めることで避けられます。
Q.2026年最新の法改正の動向は?
A. 2026年における動物愛護関連の法改正は、主にブリーダーや業者への規制強化が中心ですが、一般飼い主にに関する部分では、「ペットの終生飼育責任の強化」が引き続き重要なテーマです。
各自治体では、高齢飼い主の入院や死亡に備えた相談窓口の設置や、NPO法人との連携を行い、公益性の高い信託制度の紹介に取り組んでいるケースも増えています。
最新の情報は、必ず地域の行政窓口や専門家に確認してください。
まとめと行動への最初の一歩
飼い主の死亡は、相続や法律の問題と、ペットの命と心の問題が複合的に絡み合う難しいケースです。
生前の備えを通じて、愛情を形に残す行動を今すぐ開始しましょう。
本記事を読み終えたあなたは、ペットの将来に対する不安を解決するための知識と行動の方針を手に入れました。
ペット信託の設計は高度な法的知識と動物愛護への理解が必要となるため、必ず専門家への相談を行ってください。
当事務所では、ペットの終生飼育を見据えた相続対策や信託設計に強みを持っているペット相談士のライセンスを持った司法書士が対応しております。
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一歩踏み出す勇気が、ペットの永遠の幸せに繋がります。
外部リンク
専門家監修情報

当記事は、ペット相続に精通した司法書士が監修しています。
この記事は名波司法書士事務所が監修しています。
監修者:名波直紀
資格:司法書士、ペット相続士®️
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