空き家を相続放棄した場合の管理責任について解説
親が亡くなって相続が発生したものの、空き家になった実家を相続したくないために相続放棄を考えている方がいらっしゃるかもしれません。
この記事では、空き家を相続放棄した場合、管理責任はどうなるのかについて説明します。
相続放棄とは何か?
相続放棄とは、亡くなった人(以下、被相続人)が所有する財産を相続人が引き継ぐのを拒否することです。
相続放棄をする場合、相続が開始したことを知ってから3か月以内に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。
申立てをした書類に不備がなければ家庭裁判所から照会書が届きます。
申立人は照会書を返送し、後日相続放棄申述受理通知書が届けば、相続放棄の手続きが完了します。
相続放棄をしたら、最初から相続人ではなかった扱いとなります。
もし子どもや孫がいたとしても代襲相続は起きません。
いったん相続放棄をしたら、原則撤回はできませんので慎重に検討しなければなりません。
相続放棄をしたほうが良いとされているのは、以下の3つに該当するケースです。
- 被相続人が財産よりも借金などの負債を多く遺した場合
- 不要な不動産の固定資産税を払いたくない場合
- 相続人同士の争いに巻き込まれたくない場合
空き家を相続放棄した場合、管理責任はどうなる?
2023年4月に施行された民法改正で、相続放棄をしても後順位の相続人もしくは相続財産清算人に引き渡すまでは相続財産に対し注意義務を持って自主的に管理しなければならないと明確に規定されました。
相続放棄をしたから空き家になった実家のことは関係ない、というわけにはいかないのです。
家は適切に管理しなければ、多くの問題が発生します。
例えば、庭の草木が伸び放題で、管理が行き届いていなければ、防犯上よくありません。
近所の人が苦情を言ってきたり、放火の被害にあったりする場合があります。
そして家は人が住まないと驚くほど劣化していきますので、壁や屋根が傷んでしまいます。
万が一、壁や屋根が崩れて通行人や近所の人にけがをさせてしまえば、損害賠償請求される可能性があります。
これらのようなリスクを考えた上で、空き家の管理は適切に行わなければいけません。
相続人全員が相続放棄したら空き家の管理はどうすればいいか?
相続人の中で自分一人だけが相続放棄したなら、後順位の相続人に空き家を引き渡して管理を託せばよいです。
しかし相続人全員が相続放棄をした場合は、相続財産清算人を選任し、空き家を引渡すまで管理をしなければいけません。
相続財産清算人は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
申立てができるのは利害関係人なのですが、ここで注意しなければならないのは、相続放棄をしたという理由だけで、利害関係人に該当しない点です。
例えば、空き家が倒壊するリスクがあり、自治体から管理を求められたという事情があれば、利害関係人として相続財産清算人の申立てができる可能性があります。
相続財産清算人の申立てに必要な書類は以下のとおりです。
- 申立書(裁判所の公式サイトでダウンロードできます)
- 被相続人の出生から死亡まで、繋がりが分かる戸籍謄本
- 被相続人の両親の出生から死亡まで、繋がりが分かる戸籍謄本
- 被相続人の子ですでに死亡している人がいる場合、その人の出生から死亡まで、繋がりが分かる戸籍謄本
- 被相続人の直系尊属(祖父母など)の死亡の記載がある戸籍謄本
- 被相続人の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その人の出生から死亡まで、繋がりが分かる戸籍謄本
- 代襲者として甥・姪で死亡している人がいる場合、死亡の記載がある戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 被相続人の財産が分かる資料(不動産登記事項証明書等)
- 利害関係人が申し立てる場合、利害関係を証する資料
- 相続財産清算人の候補者がいる場合は、その人の住民票もしくは戸籍の附票
申立てに際し、収入印紙800円、家庭裁判所との連絡用の郵便切手(家庭裁判所ごとに違うので事前に確認をしましょう)、官報公告料5075円がかかります。
官報公告料は家庭裁判所の指示があった後に納めます。
相続財産清算人に選任されるための資格は不要ですが、弁護士や司法書士が選ばれることがあります。
相続放棄に関することは、名波司法書士事務所にご相談ください
名波司法書士事務所では、相続に関するご相談を承っております。
不動産を相続放棄するのが最善の方法なのか迷われている方や、具体的に相続財産清算人に選任を検討されている場合のご相談にも応じられますので、お気軽にお問合せください。