基礎知識

未成年の相続手続き

被相続人の子は、第一順位の血族相続人として、被相続人の遺産を相続するケースが多いと言えます。しかしながら、被相続人の子が未成年者である場合も多いです。未成年者は、成年者と同じように遺産分割に参加することができないので、未成年者の遺産相続手続きは一つの問題となってきます。

では、未成年者は、なぜ遺産分割に参加できないのでしょうか。その理由としては、未成年者は意思無能力者であり、意思無能力者がやった法律行為は無効になるとされているからです(民法3条の2)。仮に、未成年者が意思能力を有するとしても、行為能力がないと判断されるので、法律行為をすることができません。たとえば、漢字さえ読めない未成年者などでは、遺産分割協議書の作成に参加しても、自分の利益をきちんと守れないでしょう。また、仮に、漢字を読めるとしても、社会経験のなさによって、相続という概念をきちんと理解できない可能性が高いと思われています。

しかし、未成年者でも、日常用品の売買から、学校の進学まで、様々な法律行為をやらなければ、世の中で生きていけないでしょう。そのため、行為能力を有しない未成年者は、通常親権者の代理行為により、法律行為をします。親権者は、原則として、未成年者の財産上の行為について、代理権を有します(民法824条)。しかし、親権者の立場と未成年者の立場が相反する場合に、未成年者の利益を保護するために、親権者は未成年者の代理権を失います(民法830条)。遺産相続について、親権者の立場と子どもの立場は相反になる可能性が高いとされています。たとえば、AとBが結婚し、子どもCを産みました。その後、Aが死亡し、Aは遺言を残さなかった場合、BとCは法定相続人として、Aの遺産を相続します。この場合のBとCの立場は相反になります。Bは自分の利益を守りながら、Cの代理人として、Cの利益も守ることはできません。遺産分割に関して協議する際にも、BはCの代理人である自分自身と協議するのも有り得ません。そのため、この場合には、Cのために、特別代理人を選任する必要があります。Cのために、特別代理人を選任せずに、BがCの代理人として、参加した遺産分割はBの無権代理行為だとされます。この遺産分割は将来において、無効になる可能性があります。

利益相反行為にあたるかどうかについて、様々な学説があります。判断しやすい場合がある一方で、判断しにくい場合もあります。しかし、未成年者の相続手続きは、利益相反行為にあたるかどうかによっても異なってきます。間違えた判断により、将来において、自分の子どもに責任が問われる可能性がある一方で、紛争の繰り返しになり、親族間の関係が悪化になる恐れがあります。未成年者の相続問題について、悩んでいる方は、一度専門家とのご相談をお勧めします。

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