基礎知識

【司法書士が解説】自筆証書遺言保管制度のメリット・デメリット

2020年7月、自筆証書遺言の保管制度がスタートしました。
自筆証書遺言は自分一人で作成するので、費用がかからず手軽にできます。
その一方で、自分自身で保管しなければならないため、盗難や偽造などの恐れがあります。
自筆証書遺言の保管制度を利用すればこうしたリスクを防止できますが、具体的にどのようなメリット・デメリットがある制度なのか、以下で解説していきます。

 

自筆証書遺言保管制度について

 

自筆証書遺言保管制度とは、自筆証書遺言を法務局に預けて保管する制度です。
この制度を利用すると、自筆証書遺言が民法に定められた形式で作成されているかどうか遺言書保管官の外形的なチェックが受けられ、自筆証書遺言の原本だけでなく画像データも保管・管理されます。
自筆証書遺言の原本は、遺言者が亡くなった後50年間、画像データは遺言者が亡くなった後150年間保存されます。

 

自筆証書遺言保管制度を利用するメリット

 

自筆証書遺言保管制度を利用する3つのメリットについて解説します。

 

自筆証書遺言の盗難・偽造が防げる

この制度を利用すれば、適切に管理されるため盗難や偽造が防げます。
これまでは自筆証書遺言を作成したら、自身で保管しなければならず、盗難にあったり利害関係人が改ざんしたりする可能性がありました。
さらに、相続が発生しても遺言の保管場所が分からず、相続人が困ってしまう場合もあります。
この点、本制度を利用すれば、法務局が遺言者の死亡を確認した場合、相続人に対して通知をするので、こうした不安が払しょくされます。

 

家庭裁判所の検認が不要になる

この制度を利用すれば、相続開始時に必要だった家庭裁判所の検認が不要となります。
自筆証書遺言の検認申立ては、家庭裁判所へ申立てをしなければならず、その際には遺言者の出生から亡くなるまでの戸籍全部事項証明書等が必要になるなど、時間と手間がかかります。
こうした手続きが不要になるのは大きなメリットです。

 

手数料が比較的安い

自筆証書遺言保管制度の保管申請手数料は3900円で、比較的安いところもメリットです。
例えば、公正証書で遺言書を作成する場合、手数料は遺言する目的の財産価格に対応して決められており、3万円前後になるケースが多いです。
公正証書にするのは面倒だけれど、とりあえず安心して遺言書を保管したいと考えている方にとって有効な方法といえます。

 

自筆証書遺言保管制度を利用するデメリット

 

自筆証書遺言保管制度を利用する3つのデメリットについて解説します。

 

遺言書の有効性は保証されない

この制度を利用したことで遺言書の内容そのものが有効だと保証されるわけではありません。
自筆証書遺言は民法で規定されているとおりの形式で作成されていなければ無効となる可能性があります。
保管申請をする際に、法務局の遺言書保管官が外形的なチェックはするものの、それが遺言書そのものの有効性を保証するものではありません。
公正証書遺言であれば無効になることはほとんどありませんが、自筆証書遺言保管制度を利用した遺言書が無効になる可能性はゼロではありません。

 

遺言書の内容のアドバイスはできない

この制度では、遺言書の内容について法的なアドバイスはできません。
内容に不安がある場合は、事前に専門家への相談をおすすめします。

 

本人が法務局へ行かなければならない

この制度を使うためには、必ず本人が法務局へ行かなければいけません。
遺言者自らが法務局に出向かないのは、保管申請の却下事由の一つに該当します。
代理人を立てられないのはデメリットの一つであるといえます。

 

自筆証書遺言保管制度に関することは、名波司法書士事務所までご相談ください

 

自筆証書遺言書保管制度は、自筆証書遺言書を安全に保管するために有効な方法です。
しかし、せっかく作成した自筆証書遺言書が無効になってしまうというリスクもあります。
そうしたトラブルを避けるためにも、自筆証書遺言書保管制度を利用する前に、正しく遺言書が作成されているかどうか、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

名波司法書士事務所は、相続・遺言等について、無料相談を随時受け付けています。
ひとり一人の悩みに応じてアドバイスをいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

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