コラム

「まだ大丈夫」が手遅れになる前に――相続・不動産問題を予防する5つの確認

相続や不動産の問題は、ある日突然発生するように見えて、実際にはその前から小さな兆候が現れていることが少なくありません。

「親の物忘れが増えてきた」「昔の登記がそのまま残っている」「家族間で財産の話をしたことがない」――こうした状況を放置すると、必要な契約ができなくなったり、手続きが止まったりする可能性があります。

今回は、日頃の相談対応から見えてくる、問題の早期発見・予防・解決に役立つポイントをご紹介します。

1.物忘れが増えたら、財産管理の仕組みを確認する

認知症などにより判断能力が低下すると、本人名義の預金の払戻しや不動産の売却、遺言書や各種契約の作成が難しくなることがあります。

家族がキャッシュカードを預かっている場合も注意が必要です。

本人のために使ったお金であっても、記録がなければ、将来ほかの相続人から「使途が分からない」と指摘される可能性があります。

早い段階で、次の点を確認しておきましょう。

  • 預金、不動産、保険などの財産一覧
  • 通帳や重要書類の保管場所
  • 誰が何を管理しているか
  • 支出の記録方法
  • 財産管理契約、任意後見、家族信託などの必要性

重要なのは、制度を先に選ぶことではありません。

本人の希望、家族関係、財産の種類、将来必要になる支出を整理したうえで、適切な仕組みを選ぶことです。

2.古い登記や仮登記を放置しない

不動産には、過去の売買予約や担保などに基づく仮登記が残っていることがあります。

権利者が亡くなっている場合、相続人への登記をしなければ、その後の手続きへ進めないことがあります。

また、仮登記の原因となった請求権について、時効や契約内容の確認が必要になる場合もあります。

古い登記が見つかったら、次の資料を早めに集めることが大切です。

  • 最新の登記事項証明書
  • 仮登記や売買予約の原因となった契約書
  • 当時の領収書や連絡記録
  • 権利者・所有者の戸籍関係書類
  • 固定資産税関係の資料

時間が経つほど、当時の事情を知る人や資料が失われていきます。

「売却するときに考えればよい」と先送りせず、現状だけでも確認しておきましょう。

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3.相続税は「たぶん申告不要」で判断しない

相続税の申告が必要かどうかは、預金残高だけでは判断できません。

不動産、保険、共済、未収金、名義預金、生前贈与などを加えると、当初の見込みが変わることがあります。

不動産についても、固定資産税評価額をそのまま使うとは限りません。

申告の要否が境界に近い場合は、次のような財産を漏れなく確認します。

  • 土地・建物
  • 預貯金
  • 株式や投資信託
  • 生命保険金
  • 共済・出資金
  • 貸付金や未収金
  • 過去の贈与
  • 借入金や未払費用

相続税には申告期限があります。

申告が必要か迷う場合は、資料をそろえて税理士に確認することが、結果的に最も安全です。

4.土地を担保にした個人間融資は、口約束で進めない

親族や知人同士の貸し借りでも、土地を担保にする場合は慎重な設計が必要です。

単に借用書を作るだけでなく、返済期限、返済方法、返済が滞った場合の扱い、担保の順位、登記費用の負担などを明確にする必要があります。

特に確認したいのは、次の事項です。

  • 借主本人の意思と理解
  • 返済原資と返済計画
  • 土地の所有者と評価
  • 既存の抵当権や差押え
  • 担保設定の範囲
  • 期限の利益を失う条件
  • 当事者間に利益相反がないか
  • 税務上の問題がないか

高齢者が当事者となる場合は、後日「契約内容を理解していなかった」と争われないよう、説明内容や本人確認の記録を残すことも重要です。

5.離婚と不動産の名義変更は、ローンと同時に考える

離婚時に「家を一方が取得する」と合意しても、それだけで住宅ローンの債務者が変わるわけではありません。

まず、不動産が単独名義か共有名義か、抵当権がどのように設定されているかを確認します。

そのうえで、金融機関の借換え審査と、抵当権抹消・財産分与・所有権移転の順序を調整する必要があります。

先に名義だけ変更すると、融資条件との不整合が生じる可能性があります。

反対に、元配偶者の署名や協力が得られないと、手続きが止まることもあります。

離婚協議では、不動産の帰属だけでなく、ローン、登記、税金、必要書類、手続期限まで含めて合意内容を整理しましょう。

問題を防ぐための共通チェックリスト

次の項目に一つでも当てはまる場合は、早めの確認をおすすめします。

  • 親の物忘れや判断力の低下が気になり始めた
  • 家族の一人だけが通帳や財産を管理している
  • 相続財産の全体像が分からない
  • 昔の仮登記や抵当権が残っている
  • 契約書や権利証の所在が分からない
  • 相続税がかかるかどうか判断できない
  • 個人間で土地を担保にお金を貸し借りする予定がある
  • 離婚に伴い住宅名義やローンを変更したい
  • 家族間で財産の分け方を話し合っていない

まとめ

相続や不動産の問題では、問題が起きてからの対応よりも、手続きができるうちに準備することが重要です。

まずは財産・登記・契約・家族関係を整理し、「誰が、いつまでに、何を確認するか」を決めましょう。

司法書士、弁護士、税理士などは担当できる範囲が異なるため、相談内容に応じて連携することも大切です。

早めの確認は、財産を守るだけでなく、家族間の誤解や争いを防ぐことにもつながります。

「少し気になる……」その小さな違和感を放置していませんか?

親の物忘れ、昔の仮登記、住宅ローンと名義変更の調整、相続税の要否など、日常の小さな変化や違和感は、将来の手続き停止や大きなトラブルに発展する前兆かもしれません。

相続や不動産の問題は、判断能力や関係者の協力が得られる「できるうち」に対処することが何より重要です。

当事務所(静岡県浜松市)では、2,000件超の相続・不動産実務を見てきた経験から、問題の早期発見から適切な予防策のご提案まで親身にサポートいたします。

司法書士の業務範囲にとどまらず、必要に応じて弁護士・税理士等とも連携して対応いたしますので、迷う段階でもお気軽にご相談ください。

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※本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別案件に対する法律・税務上の助言ではありません。具体的な手続きについては、司法書士、弁護士、税理士などの専門家へご相談ください。


公開日:2026年8月17日
最終更新日:2026年7月28日

執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040

本記事は、2026728日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。

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