コラム

遺言執行者は指定すべき?誰を選ぶか・司法書士に頼む場合の役割

遺言書の最後に置く一文「遺言執行者として◯◯を指定する」。

この一文があるかないかで、死後の手続きのスピードと家族の負担が大きく変わります

指定すべきケース、誰を選ぶべきか、専門家に頼む場合の実際を解説します。

 

遺言執行者とは:遺言を「実行する人」

遺言書は書いただけでは実現しません。

預金の解約、不動産の登記、株式の名義変更——誰かが手を動かして初めて遺言の内容が実現します。

その実行役として遺言で指定されるのが遺言執行者です。

執行者には遺言の実現に必要な一切の権限が与えられ、相続人全員の協力(実印・印鑑証明書)を集めることなく、単独で手続きを進められます

指定するとどう変わるか

手続き 執行者なし 執行者あり
預貯金の解約 金融機関により相続人全員の書類を求められることが多い 執行者が単独で手続き可
遺贈による登記 相続人全員が登記義務者になる 執行者が受遺者と共同で(相続人の関与不要)
手続き全体の進行 相続人の誰かが音頭を取る必要 執行者が一元的に進行

特に次のケースでは、執行者の指定は事実上必須です。

  1. 相続人以外への遺贈がある(遺贈の登記は執行者がいないと相続人全員の協力が必要)
  2. 相続人の仲が悪い・疎遠(協力を求めること自体が困難)
  3. 認知や廃除など、執行者にしかできない事項を遺言に書いた
  4. おひとりさまで、手続きを担う身近な人がいない(おひとりさまの遺言)

 

誰を選ぶか:家族か、専門家か

家族(配偶者・子)を指定する場合

費用がかからず、最も多い選択です。

ただし執行者は、就任通知・財産目録の作成交付・金融機関や法務局での手続きと、平日昼間の作業をかなり担います。

高齢の配偶者や、他の相続人と利害が対立する立場の人を指定すると、負担や不信の種になることがあります。

司法書士等の専門家を指定する場合

登記・預貯金・株式まで手続きを一括して任せられ、相続人間の中立性も保てます。

報酬の目安は財産額に応じて◯◯円〜(※事務所の報酬体系に差し替え)。

遺言書の中に報酬の定めを書いておくと死後の疑義がありません。

実務でおすすめの形は、「本命+予備」の二段指定です。

「執行者として妻を指定する。妻が先に死亡していたとき又は就任できないときは、司法書士◯◯を指定する」

このようにしておく事で、執行者の欠員という空白を防げます。

 

執行者に指定されたら断れる?

指定された人には就任を承諾する義務はなく、辞退もできます。

だからこそ、指定する前に本人の了解を取っておくのが鉄則です。

突然の指定は、承諾されないリスクだけでなく、心情的な軋轢も生みます。

 

遺言執行者を指定する際の文例

第◯条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。

浜松市◯◯区◯◯町◯番地◯

司法書士 ◯◯ ◯◯(昭和◯年◯月◯日生)

2 遺言執行者に対する報酬は、◯◯◯とする。

3 遺言執行者は、本遺言の執行に必要な一切の権限を有する。

 

まとめ

遺言執行者は「遺言を絵に描いた餅にしないための実行役」です。遺贈がある・相続人が疎遠・手続きの担い手がいない——一つでも当てはまれば指定を。そして指定は必ず本人の了解とセットで。予備の執行者まで書けば設計は万全です。


作成日:2026年8月3日

執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040

※本記事は、2026年8月3日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。

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