コラム

付言事項の書き方:家族への想いで争いを防ぐ「最後のメッセージ」

遺言書の最後に添える「付言事項」。財産の分け方のような法的効力は一切ありません。

しかし浜松で多くの相続の現場を見てきた実感として、争いを防ぐ実際の力は、本文の条項に勝るとも劣りません

書き方と文例を紹介します。

 

付言事項とは:効力はないが、力はある

付言事項は、遺言の本文(財産の承継先など法的効力を持つ部分)の後に自由な形式で書き添えるメッセージです。

配分の理由、家族への感謝、葬儀の希望などを書きます。

法的拘束力がないため、何を書いても遺言の効力には影響しません。

では何のために書くのか。遺言の弱点は、書いた本人が死後に説明できないことです。

「なぜ長男に多いのか」

「なぜ次女には現金だけなのか」

——理由の分からない配分は、それだけで不信と対立を生みます。

付言事項は、本人に代わってその理由を語る唯一の手段です。

 

争いを防ぐ付言の3要素

実務で効果を感じるのは、次の3要素を備えた付言です。

  1. 配分の理由:「長男夫婦には10年にわたり同居して介護を担ってもらったため、自宅を長男に相続させることにしました」
  2. 他の相続人への感謝と配慮:「二男にも感謝しています。遠方から幾度も見舞いに来てくれたことは私の支えでした」
  3. 争わないでほしいという願い:「私の願いは家族が仲良く暮らすことです。この遺言の内容で、どうか争わないでください」

特に遺留分を侵害する可能性のある配分では、付言による理由の説明が遺留分侵害額請求を思いとどまらせる現実的な抑止力になります。

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付言事項の文例

付言事項

この遺言は、私なりに家族みんなの幸せを考えて書いたものです。

花子には長年連れ添ってくれたことに心から感謝しています。

自宅を遺すのは、住み慣れた家で安心して暮らしてほしいからです。

太郎には家業を継ぎ、支えてくれたことに感謝しています。

事業用の財産を託すのは、これからも従業員とお客様を大切にしてほしいからです。

次郎への配分が少ないことを心苦しく思いますが、住宅資金の援助をした経緯を踏まえたものです。

どうか理解してください。

私の最後の願いは、三人がこれからも支え合って生きていくことです。

葬儀は家族だけで簡素に行ってください。

 

書かない方がよいこと

付言は諸刃の剣です。

次の内容は逆効果になるため避けてください。

  • 特定の相続人への非難・恨み言:「◯◯は親不孝だったので」——争いの火に油を注ぎ、遺言無効の争いや感情的対立を激化させます。
  • 本文と矛盾する内容:「本当は平等に分けたかった」等、本文の意思を疑わせる記載は解釈争いの種になります。
  • 効力があるかのような追加の指示:財産の指定は必ず本文の条項に。付言に書いても実現されません。

 

葬儀・お墓の希望について

葬儀の方式や散骨の希望なども付言に書けますが、法的拘束力はなく、実際に葬儀が行われる時点で遺言が開封されていないことも多いのが実情です。

確実に伝えたい希望は、エンディングノートや生前の会話で共有しておくのが現実的です。

エンディングノートとの使い分けについては別記事で解説しています。

エンディングノートと遺言書の違い:法的効力があるのはどっち?

 

まとめ

付言事項は法的効力を持たないものの、遺言者の「配分の理由・家族への感謝・仲良く過ごしてほしいという願い」を伝えることで、死後のトラブルや感情的な対立を未然に防ぐ大きな力を持っています。

  • 書くべき3要素: 配分の理由、他の相続人への感謝と配慮、争わないでほしいという願い

  • 避けるべきこと: 特定の人への不満や非難、本文と矛盾する内容

財産の分け方と同じくらい、最後のメッセージに込める「想い」は重要です。

当事務所では、ご家族が納得し笑顔で相続を迎えられるよう、付言事項を含めた遺言書全体の作成をサポートしております。

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「不公平だと思われないか心配で、付言事項に何を書けばいいか分からない」

「自分の意図や感謝の気持ちが、正しくご家族に伝わる文面にしたい」

財産の分け方(本文)に法的な不備がないことはもちろん大切ですが、残されたご家族が納得して受け入れられるかどうかは、付言事項に込める「理由と想い」にかかっています。

当事務所(静岡県浜松市)では、2,000件超の相続・遺言実務に携わってきた司法書士が、法的効力のある条項の設計から、ご家族の絆を守る付言事項のアドバイスまで親身にトータルサポートいたします。

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作成日:2026年8月3日

執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040

※本記事は、2026年8月3日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。

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