書いた遺言書を訂正したいとき:方式を守らないと訂正が無効になる

自筆証書遺言を書いていて一文字間違えた——このとき修正テープで直したり、二重線だけで済ませたりすると、その訂正は法律上「なかったこと」になります。
民法は遺言の加除訂正に厳格な方式を定めており、方式を満たさない訂正は無効です。
正しい手順と、実務での現実的な結論をお伝えします。
民法が定める訂正の方式(4点セット)
自筆証書遺言の訂正が有効となるには、次のすべてが必要です。
- 訂正する場所を指示する(例:本文中の誤字を二重線で消し、正しい字を書き加える)
- 変更した旨を付記する(例:欄外に「本行中、二字削除二字追加」と自書)
- 付記に署名する
- 訂正箇所に押印する(遺言書に押した印と同じ印で)
“`
(欄外)本行中「二男」を削除し「長男」を追加 名波一郎
(本文)…別紙目録第1記載の不動産を、二男 長男 名波太郎に相続させる。
~~~~ ㊞
“`
方式を誤るとどうなるか
方式違反の訂正は無効となり、訂正前の記載が生きているものとして扱われるのが原則です(訂正で元の字が判読できなくなった場合など、扱いが複雑になるケースもあります)。
「二男」を「長男」に直したつもりが、法律上は「二男」のまま——遺す相手が変わってしまう、恐ろしい帰結です。
修正テープ・修正液・塗りつぶしは、この方式を満たしようがないため使えません。
実務の結論:訂正せずに「最初から書き直す」
正直に申し上げると、この訂正方式を完璧にこなすのは専門家でも神経を使います。
そして自筆証書遺言は用紙代しかかかりません。
だから実務の結論はただ一つ——書き損じたら訂正せず、新しい用紙に最初から書き直す。
これが最も安全で、結局いちばん早い方法です。
清書前に鉛筆で下書きを作る、パソコンで下書きしてから見ながら清書する、という段取りにすれば、書き損じ自体を減らせます。
下書きテンプレートは書き方の記事からダウンロードできます)。
「完成後に内容を変えたい」は訂正ではなく新しい遺言で
書いている途中の誤字と、完成した遺言の内容変更は別問題です。完成後に「やはり配分を変えたい」となったときは、訂正ではなく新しい日付の遺言を作成してください。
後の遺言が優先するというルールにより、古い遺言は抵触する範囲で効力を失います。
古い遺言は破棄し、保管制度に預けてある場合は撤回・再保管の手順を踏みます。
関連記事
自筆証書遺言・公正証書遺言・保管制度、結局どれを選ぶ?費用と確実性で比較
公正証書遺言の場合
公正証書遺言の内容を変えたいときも、新しい公正証書遺言を作るのが原則です(軽微な誤記は公証役場の更正手続きで対応されることがあります)。
自筆遺言で公正証書遺言の内容を上書きすることも法律上は可能ですが、確実性の高い遺言を確実性の低い方式で覆すのは争いを招きやすく、おすすめしません。
まとめ
遺言の訂正方式は「場所の指示・変更の付記・署名・押印」の4点セット。
しかし覚えるべき実務の結論は一つです——迷ったら書き直す。
完成後の変更は新しい遺言で。
この二原則だけで、訂正をめぐる無効リスクはゼロにできます。
「書き損じた遺言書、これで大丈夫?」とお悩みの方へ
「途中で書き直した箇所があるけれど、これで法的に有効?」
「過去に書いた遺言書の内容を、不備なく変更したい」
自筆証書遺言の訂正ルール(加除訂正)は非常に厳格で、修正テープはもちろん、二重線と押印だけでは訂正自体が無効になってしまいます。
少しでも修正箇所がある場合は、新しく書き直すかプロによる確認を受けることが最も安心です。
当事務所(静岡県浜松市)では、2,000件超の相続・遺言実務に携わってきた司法書士が、ご自身で書かれた遺言書の「文面チェック」から、不備のない再作成・変更サポート、法務局での保管手続きまで親身にお手伝いいたします。
残されたご家族が困ることのない「確実に使える遺言書」にするために、まずは無料相談で専門家の確認を受けてみませんか?
作成日:2026年8月2日
執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040
※本記事は、2026年8月2日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。


