コラム

無料で遺言書の下書きを作成できるツールを公開しました

無料で遺言書の下書きを作成できるツールを公開しました

自分で書いた遺言書が、いざという時に使えない——その矛盾をなくしたい

「遺言書は、いつか書かなければいけないと思っている」
「でも、何から手をつければよいか分からない」
「専門家に相談するほど、まだ考えがまとまっていない」

このようなお声を、相続や遺言のご相談の中でよくお聞きします。

一方で、司法書士として相続手続きや相続登記の実務に関わる中で、これまで多くの自筆証書遺言を拝見してきました。

その中で感じてきたのは、ご本人が一生懸命書かれた遺言書であっても、実際の相続手続きや相続登記の場面では、そのまま使えないことが少なくないという現実です。

たとえば、不動産について、

「裏の土地を長男に相続させる」
「自宅を妻に残す」
「畑は二男に任せる」

といった表現で書かれていることがあります。

ご本人やご家族には意味が分かる表現かもしれません。
しかし、相続登記の場面では、その土地がどの不動産を指しているのかを、登記情報に基づいて正確に特定できなければ手続きに使えないことがあります。

遺言書は、亡くなった後に使われる書類です。
そのとき、ご本人が「この土地のことです」と説明することはできません。

だからこそ、残されたご家族が迷わず手続きを進められるように、財産の書き方、特に不動産の表示はとても重要です。

ところが、自筆証書遺言を書く方の多くは、専門家に相談することなく、ご自身の判断だけで作成されています。

「自分で書ける制度」であるにもかかわらず、
「自分だけで書くと、実務で使えないことがある」。

この矛盾を、何とかしたい。

その思いから、今回、自筆証書遺言の下書きを無料で作成できるツールを公開しました。

完璧な遺言書を、最初から一人で作る必要はありません。
まずは、無料ツールで考えを整理する。
不動産など注意が必要な部分は、清書前に確認する。

そのような流れをつくることで、「せっかく書いた遺言書が使えなかった」という事態を少しでも減らしたいと考えています。

【▶ 遺言書下書き作成ツールはこちら】
Claude Fable 5で作成


遺言書は「書けたか」ではなく「使えるか」が大切です

自筆証書遺言は、ご自身で作成できる遺言書です。

費用をかけずに作成できる。
思い立ったときに書ける。
家族への想いを自分の言葉で残せる。

このような良さがあります。

しかし、遺言書は、書いた時点で役割が終わるわけではありません。

本当に大切なのは、相続が発生した後に、遺されたご家族がその遺言書を使って、預貯金の手続きや不動産の相続登記などを進められるかどうかです。

つまり、遺言書は、
「書けたかどうか」ではなく、「実際に使えるかどうか」
が大切です。

自筆証書遺言では、全文を自筆で書くこと、日付を書くこと、氏名を書くこと、押印することなど、法律上の方式があります。

しかし、実務で問題になるのは、形式だけではありません。

誰に何を遺すのか。
その財産は正確に特定できているのか。
相続人との関係で争いが起きにくい内容になっているのか。
不動産の表示は登記に使える内容になっているのか。
遺言執行者を指定した方がよいケースではないか。

こうした点まで考えておく必要があります。


無料ツールで、まずは遺言書の下書きを作成できます

今回公開した「遺言書下書き作成ツール」では、画面の案内に沿って入力することで、自筆証書遺言の下書きを作成できます。

主な特徴は、次のとおりです。

1. 遺言者の情報を整理できます

氏名、生年月日、住所、作成日などを入力し、遺言書の末尾に記載する基本情報を整理できます。

自筆証書遺言では、日付の記載がとても重要です。
「令和○年○月○日」のように、日付が特定できる形で書く必要があります。

2. 財産を受け取る方を登録できます

配偶者、子ども、兄弟姉妹、甥・姪、お世話になった方など、財産を受け取る方を登録できます。

法定相続人に財産を遺す場合と、相続人以外の方に遺す場合では、遺言書の表現が変わることがあります。
ツールでは、受け取る方の情報を整理しながら、下書きに反映できるようにしています。

3. 土地・建物・預貯金などを整理できます

遺言書では、財産をできるだけ特定できる形で書くことが大切です。

土地や建物、預貯金、その他の財産などを入力しながら、「自分が何を持っていて、誰に遺したいのか」を整理できます。

4. 「誰に、何を遺すか」を指定できます

登録した財産ごとに、誰に遺すのかを指定できます。

たとえば、

「自宅は長男に」
「預貯金は妻に」
「全財産は妻に。ただし自宅だけは長男に」

といった形で、具体的な分け方を整理できます。

5. 付言事項にも対応しています

遺言書には、法律的な財産の分け方だけでなく、家族への想いを記す「付言事項」を書くことができます。

付言事項には、法的な効力はありません。
しかし、なぜそのような分け方にしたのか、家族にどう受け止めてほしいのかを伝えることで、遺された方の納得につながることがあります。

ツールでは、感謝の気持ち、配分の理由、家族に争ってほしくないという想いなどを整理できるようにしています。


入力内容は保存・送信されません

遺言書の下書きを作るとなると、氏名、住所、財産、家族構成など、非常に大切な情報を入力することになります。

そのため、「入力した情報がどこかに送信されるのではないか」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

このツールは、入力内容を外部に送信・保存しない設計にしています。
入力された情報は、お使いの画面の中だけで処理され、画面を閉じたり、再読み込みしたりすると消えます。

安心して、ご自身の考えを整理するためにご利用ください。

ただし、共有のパソコンや職場の端末で利用する場合は、画面を他の方に見られないようご注意ください。
また、印刷する場合は、ご自宅のプリンターなど安全な環境で行うことをおすすめします。


アプリは「登記情報を正確に転記するための器」です

ここで大切なのは、無料ツールの役割です。

このツールは、不動産を入力する際に、土地であれば所在・地番・地目・地積、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積などを入力できるようにしています。

つまり、アプリは、登記事項証明書をお持ちの方が、その内容を正確に転記するための「器」です。

「自宅」
「裏の土地」
「畑」
「実家」
「駐車場」

といったあいまいな表現を避け、登記で必要になる項目を整理しやすくするためのものです。

しかし、ここで注意が必要です。

アプリが入力欄を用意していても、そもそもどの不動産を記載すべきか、どの登記情報を確認すべきか、何を見落としてはいけないかを判断すること自体が難しい場合があります。

たとえば、

私道部分の持分がある。
共有になっている土地がある。
建物が未登記になっている。
固定資産税の通知書には載っているが、登記情報との対応が分かりにくい。
昔の名義のままになっている不動産がある。
自宅敷地が複数の筆に分かれている。
土地と建物の所有者が異なる。

このような場合、単に入力欄を埋めるだけでは不十分なことがあります。

アプリは、登記情報を正確に転記するための道具です。
一方で、どの不動産を拾い上げるべきか、どの表示を使うべきか、私道持分や未登記建物をどう扱うべきかは、専門的な確認が必要になることがあります。

そのため、不動産がある方は、無料ツールで下書きを作成したあと、清書前に不動産表示を確認しておくことをおすすめします。


不動産を遺言書に書く場合は、特に注意が必要です

不動産について、日常的な感覚では、

「自宅」
「裏の土地」
「畑」
「実家」
「駐車場」

と表現したくなることがあります。

しかし、相続登記の場面では、その表現だけでは不動産を特定できないことがあります。

ご本人にとっては「裏の土地」で通じる土地であっても、登記上はどの地番の土地なのかを明確にする必要があります。

土地であれば、所在・地番・地目・地積。
建物であれば、所在・家屋番号・種類・構造・床面積。
共有持分がある場合は、その持分まで確認する必要があります。

また、「自宅」と一言でいっても、登記上は次のように複数の不動産に分かれていることがあります。

土地。
建物。
私道部分の持分。
共有になっている土地。
未登記建物。
増築部分。

遺言書は、相続登記や預貯金手続きなど、実際の手続きで使うための書類です。

そのため、残されたご家族が迷わないように、不動産の表示はできるだけ正確に整えておくことが大切です。


固定資産税の通知書だけで判断するのも注意が必要です

自筆証書遺言を作成する際、固定資産税納税通知書や課税明細書を見ながら不動産を書こうとする方は多くいらっしゃいます。

もちろん、固定資産税課税明細書は、不動産を確認するための大切な資料です。

しかし、それだけで遺言書に記載する不動産表示を判断するのは注意が必要です。

固定資産税の資料と、登記情報は、目的が異なります。
課税明細書には、登記されている土地や建物のほか、未登記建物、共有不動産、私道部分、名義が古いままの不動産などが関係してくることがあります。

そのため、固定資産税課税明細書は出発点として使いながら、最終的には登記情報を確認することが大切です。

特に、次のような場合は注意が必要です。

住所だけを書いている。
土地の地番を書いていない。
建物の家屋番号を書いていない。
土地と建物を区別していない。
共有持分を書いていない。
私道持分を見落としている。
未登記建物がある。
固定資産税課税明細書だけを見て判断している。

こうしたミスは、遺言書を作成しているご本人には気づきにくいものです。
しかし、相続が発生した後に問題になると、手続きをするご家族が困ってしまいます。


不動産の表示は、財産目録として印刷して添付する方法もあります

自筆証書遺言というと、すべてを手書きしなければならないと思われる方も多いかもしれません。

たしかに、遺言書の本文、日付、氏名などは、原則としてご本人が自書する必要があります。

しかし、財産目録については、必ずしもすべてを手書きする必要はありません。
パソコンで作成した財産目録や、登記事項証明書、預貯金通帳のコピーなどを添付する方法も認められています。

不動産の表示は、手書きで正確に書こうとすると、どうしても転記ミスが起こりやすい部分です。

そのため、登記情報に基づいて正確な不動産表示データを作成し、それを財産目録として印刷・添付することで、手書きによる間違いを防ぎやすくなります。

ただし、自書によらない財産目録を添付する場合には、財産目録の各ページに遺言者ご本人の署名と押印が必要です。
また、遺言書本文とは別の用紙で作成する必要があります。

この点も、清書前に確認しておきたい大切なポイントです。


不動産がある方は「不動産表示だけ確認する」という選択肢もあります

遺言書全体を専門家に依頼するほどではない。
でも、不動産の書き方だけは不安がある。

そのような方には、不動産表示だけを専門家が整える方法もあります。

名波司法書士事務所では、自筆証書遺言や法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用したい方向けに、遺言書に使える不動産表示作成サービスをご用意しています。

登記情報を確認したうえで、遺言書に使いやすい不動産表示データを作成し、財産目録として利用しやすい形でお渡しします。

これは、遺言書全体を専門家に依頼する前の、現実的な第一歩です。

「全部を専門家に依頼する」
「全部を自分だけで行う」

この二択ではなく、必要な部分だけ専門家の確認を入れることで、費用を抑えながら、自己流によるミスを防ぎやすくなります。

不動産がある方は、無料ツールで下書きを作成したあと、清書する前に不動産表示だけでも確認しておくことをご検討ください。

【▶ 遺言書に使える不動産表示作成サービスを見る】


下書きを持って確認相談へ進めます

無料ツールで下書きができると、遺言書作成の大きな第一歩になります。

そして、下書きがあることで、確認相談のハードルも下がります。

白紙の状態で相談するとなると、

「何を話せばよいか分からない」
「まだ考えがまとまっていない」
「相談するには早いのではないか」

と感じる方もいらっしゃいます。

しかし、下書きを作成した後であれば、すでにご自身の考えがある程度整理されています。

誰に何を遺したいのか。
どの財産をどう分けたいのか。
付言事項として何を伝えたいのか。
不動産の表示に不安があるのか。
家族関係や遺留分に不安があるのか。

こうした点が見える状態で相談できるため、確認相談の内容も具体的になります。

当事務所では、遺言書の下書きを作成された方向けに、清書前の確認相談を承っています。
初回の確認相談は無料です。

作成した下書きを印刷またはコピーしてお持ちいただくと、相談がスムーズです。
白紙からではなく、ご自身の考えを整理した状態で相談できるため、短い時間でも大切な確認に集中しやすくなります。

【▶ 清書前の確認相談を申し込む】


相談先は、不安の内容に応じて選べます

無料ツールを使った後、すべての方が同じ相談をする必要はありません。

不安の内容によって、次のように入口を分けて考えることができます。

不動産の書き方が不安な方

「自宅の土地と建物を正確に書けているか不安」
「登記事項証明書を見ても、どこを転記すればよいか分からない」
「私道持分や共有不動産があるかもしれない」
「固定資産税の通知書を見て書いているが、これでよいか分からない」

このような方は、不動産表示作成サービスをご検討ください。

登記情報に基づいて、遺言書に使いやすい不動産表示を整えることができます。

【▶ 不動産がある方へ:遺言書に使える不動産表示作成サービス】

家族関係や分け方が不安な方

「特定の子に多く遺したい」
「兄弟姉妹でもめないか心配」
「子どもがいないので、配偶者にすべて遺したい」
「遺留分が気になる」
「認知症対策や財産管理も一緒に考えたい」

このような方は、清書前の確認相談をご検討ください。

下書きをもとに、内容の整理、不動産表示、相続人関係、遺言執行者、付言事項などを一緒に確認できます。

【▶ 清書前の確認相談を申し込む】


清書前に確認しておきたいこと

下書きができたからといって、すぐに清書すれば安心というわけではありません。

遺言書は、形式だけでなく、内容がとても重要です。
特に、次のような点は個別の事情によって判断が変わります。

「この財産の分け方で、遺留分の問題はないか」
「相続人の中に認知症の方がいる場合、手続きに支障はないか」
「子どもがいない夫婦の場合、兄弟姉妹や甥・姪が関係してこないか」
「不動産の記載は相続登記に使える内容になっているか」
「預貯金や証券口座の書き方に漏れはないか」
「遺言執行者を指定した方がよいか」
「付言事項の表現は、家族に誤解を与えないか」
「公正証書遺言にした方がよいケースではないか」

特に、家族関係が複雑な場合、不動産がある場合、特定の方に多く遺したい場合、認知症や介護の不安がある場合には、清書前に一度確認しておくと安心です。

なお、確認相談の後に正式な業務をご依頼いただくかどうかは、ご相談者様の自由です。
費用が発生する業務については、事前に内容と報酬をご説明いたします。

また、個別の法律判断・税務判断が必要となる場合には、必要に応じて弁護士・税理士等の専門家と連携して対応いたします。


遺言は「自分で書く」と「専門家に確認する」を分けて考えてよい

自筆証書遺言は、自分で書ける遺言書です。

だからといって、すべてを自分だけで判断しなければならないわけではありません。

書くのはご本人。
想いを決めるのもご本人。
誰に何を遺したいのかを決めるのもご本人です。

しかし、その内容が実際の相続手続きで使えるかどうか。
不動産の表示が正確かどうか。
相続人間で誤解や争いを生みにくい内容になっているかどうか。
遺留分や認知症対策まで考えておく必要があるかどうか。

こうした点は、専門家が確認した方が安心です。

つまり、遺言書は、

自分で考える部分
自分で書く部分
専門家に確認した方がよい部分

を分けて考えることができます。

無料ツールは、そのうち「自分で考える部分」を整理するためのものです。
そして、不動産表示作成サービスや清書前の確認相談は、「専門家に確認した方がよい部分」を整理するためのものです。


まずは無料で、遺言書の下書きを作ってみませんか

遺言書は、いつか書こうと思っていても、なかなか一歩を踏み出しにくいものです。

しかし、完璧な遺言書を最初から一人で作ろうとする必要はありません。
まずは、今のお気持ちを整理するために、下書きを作ってみることから始めてみてください。

「誰に、何を遺したいのか」
「家族にどんな想いを伝えたいのか」
「自分の場合、何が不安なのか」
「相続登記に使える内容になっているのか」

下書きを作ることで、これまで漠然としていた不安が具体的になります。

そして、具体的になった不安は、解決に向けて一歩進めることができます。

まずは無料ツールで、遺言書の下書きを作成してみてください。
不動産がある方は、不動産表示の確認もあわせてご検討ください。
清書する前に不安がある方は、下書きを持って確認相談へお進みください。

【▶ 遺言書下書き作成ツールはこちら】

【▶ 不動産がある方へ:遺言書に使える不動産表示作成サービス】

【▶ 清書前の確認相談を申し込む】


まとめ

自筆証書遺言は、ご自身で作成できる遺言書です。

しかし、司法書士として多くの遺言書を拝見してきた実務経験からいうと、ご本人が一生懸命書かれた遺言書でも、相続手続きや相続登記の場面でそのまま使えないことがあります。

特に不動産については、「自宅」「裏の土地」といった表現だけでは、登記手続きに使えないことがあります。

せっかく家族のために書いた遺言書が、いざという時に使えない。
そのような事態を少しでも減らしたい。

その思いから、無料の遺言書下書き作成ツールを公開しました。

書き方の整理はツールで。
不動産の表示は必要に応じて専門家が確認。
清書前の不安は、下書きを持って確認相談へ。

大切なご家族が困らない相続のために、まずは小さな一歩から始めてみませんか。

名波直紀

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