数次相続では法定相続情報一覧図が2枚必要?被相続人ごとに作成する理由と手順

「父の相続手続きが終わらないうちに、母も亡くなってしまった」
「祖父名義のままの土地があり、その後に父も亡くなっている」
このように、最初の相続の手続きが済まないうちに、相続人が亡くなって次の相続が始まってしまうことを数次相続(すうじそうぞく)といいます。
数次相続の場合、「家族全体の関係を1枚の法定相続情報一覧図にまとめて書けばよいのでは」と考える方が多いのですが、それはできません。
この記事では、数次相続で一覧図が複数枚必要になる理由と、作成の手順を解説します。
結論:一覧図は「被相続人1人につき1枚」
法定相続情報一覧図は、「ある被相続人が亡くなった時点で、法定相続人が誰だったか」 を証明する書類です。
つまり、証明の単位は「亡くなった方1人」です。
父と母が相次いで亡くなった場合には、
- 父を被相続人とする一覧図(父の死亡時点の相続人:母と子)
- 母を被相続人とする一覧図(母の死亡時点の相続人:子)
の2枚を、それぞれ別の申出として作成することになります。
祖父→父と続いた数次相続でも同じで、祖父の一覧図と父の一覧図をそれぞれ作ります。
なぜ1枚にまとめられないのか
理由は、一覧図が「死亡時点の法定相続人」を切り取って証明する書類だからです。
父の一覧図に記載されるのは、父が亡くなった瞬間の相続人です。
その後に母が亡くなったとしても、父の一覧図のうえでは、母は相続人の1人として記載されます。
母の死亡や、母の相続分が誰に引き継がれたかは、父の一覧図には表れません。
「では、父の相続分のうち母の分が最終的に誰にいくのか」は、父の一覧図と母の一覧図を2枚あわせて示すことで、手続き先に説明できる仕組みです。
なお、この点は相続関係説明図との大きな違いです。
式が自由な相続関係説明図であれば、数次相続の関係を1枚に書き込むこともできます。
手続き先が少ない場合には、あえて一覧図を作らず説明図で進める選択肢もあります。
作成の手順:共通する戸籍は使い回せる
数次相続の一覧図作成は、次の順で進めます。
手順1:亡くなった順番を戸籍で確定する
まず、誰がいつ亡くなったかを戸籍の死亡日で確認します。
ここで重要なのが、代襲相続との区別です。
- 子が被相続人より先に死亡 → 代襲相続(孫が相続人。一覧図は1枚で、被代襲者・代襲者として記載)
- 子が被相続人より後に死亡 → 数次相続(一覧図は被相続人ごとに複数枚)
亡くなった順番が1日違うだけで、作る書類がまったく変わります。
手順2:被相続人ごとに必要な戸籍を整理する
父・母それぞれについて「出生から死亡までの戸籍一式」が必要ですが、夫婦は婚姻後の戸籍が共通しているため、重なる部分の戸籍は1通で両方の申出に使えます。
ただし、同時に別々の法務局へ申出する場合は原本がそれぞれ必要になるため、申出先と順番は少し工夫のしどころです。
手順3:一覧図をそれぞれ作成し、申出する
被相続人ごとに一覧図と申出書を作成し、法務局へ申出します。
2件を同じ法務局に同時に申出できる場合は、まとめて出すと効率的です。
誰が申出できるのか
一覧図の申出ができるのは、その被相続人の相続人です。
数次相続の場合、最初の相続(父)の相続人だった母が亡くなっていても、母の相続人(子)が、母の地位を引き継ぐ者として父の一覧図の申出をすることができます。
「父の相続人はもう全員亡くなっているから申出できないのでは」と諦める必要はありません。
ただし、この場合は自分が地位を引き継いだことを示す戸籍のつながりが必要になるため、必要書類は増えます。
数次相続でよくあるつまずき
- 家族全員を1枚の図にまとめて作ってしまい、法務局で作り直しになった
- 代襲相続と取り違えて、必要な戸籍を集め直すことになった
- 祖父名義の不動産を放置していたところ相続人が十数人に膨らんでいて、戸籍集めが終わらない
- 相続登記の義務化(3年以内)との関係で、どこから手を付けるべきかわからない
数次相続は、放置された年数が長いほど相続人が増え、難易度が上がります。
特に「祖父の代の名義のまま」といった不動産をお持ちの場合は、早めに全体像を把握することが重要です。
まず関係の整理から始めましょう
数次相続では、「どの相続について、誰が相続人か」を1件ずつ切り分けて整理することが出発点です。
相続サプリの「法定相続情報一覧図 かんたん作成アプリ」で、まず最初の被相続人(例:父)についての下書きを作り、関係を見える化してみてください。
※アプリで作成できるのは、被相続人1人分の下書きです。
数次相続全体の設計(何枚必要か、誰が申出するか)は、この記事と法務局の案内を参考にご確認ください。
数次相続こそ、専門家の使いどころです
正直に申し上げると、数次相続は、この分野の手続きの中でも専門家への依頼を検討する価値が特に高いパターンです。
- 一覧図を何枚作るべきか、そもそも一覧図と相続関係説明図のどちらで進めるべきかの設計
- 世代をまたぐ戸籍の収集と読み取り
- 増えた相続人への連絡と、遺産分割の進め方
- 相続登記義務化への対応
当事務所は、数次相続・世代をまたぐ相続登記のご依頼を数多くお受けしてきました。
「何から手を付ければいいかわからない」段階からのご相談で構いません。


