予備的遺言とは:遺す相手が先に亡くなったときに備える一文

「全財産を妻に相続させる」
——この遺言を書いた後、もし妻が先に亡くなったらどうなるでしょうか。
多くの方が「自動的に子に行くのでは」と考えますが、その条項は効力を失い、相続人全員の遺産分割協議が必要になります。
この落とし穴を一文で塞ぐのが「予備的遺言(補充遺言)」です。
なぜ条項が失効するのか
判例上、「相続させる」遺言は、指定された相続人が遺言者より先に、または同時に死亡した場合、原則として効力を生じません。
妻の代わりにその子が受け取るという解釈も原則として採られません。
遺贈も同様です。
解決策:予備的遺言の一文を入れる
「もし妻が先に死亡していたら、代わりに長男へ」という予備の受け皿をあらかじめ書きます。
第1条 遺言者は、一切の財産を妻 名波花子に相続させる。
第2条 妻が遺言者の死亡以前に死亡したときは、前条の財産を長男 名波太郎に相続させる。
「死亡以前に死亡したとき」という表現により、事故などで先後不明となる同時死亡もカバーします。
特に必要なケース
- 夫婦相互で全財産を配偶者に遺す場合
- 受取人が高齢・病気の場合
- 子のいない夫婦
- 一人っ子に遺す場合
- 団体への遺贈
二段・三段の予備も書ける
「妻→長男→孫」のように多段の予備も可能ですが、複雑化による書き誤りを防ぐため、実務では二段程度にして状況変化時に書き直す方法をおすすめします。
遺言執行者にも予備を
遺言執行者が先に亡くなる、または就任できない場合にも備え、予備の執行者を指定すると完成度が高まります。
まとめ
遺言書で指定した受取人(配偶者など)が自分より先に亡くなった場合、その条項は原則として効力を失い、せっかく書いた遺言書が無駄になってしまうリスクがあります。
・失効のリスク: 「妻に相続させる」遺言は、妻の先立たれにより効力が消滅し、相続人全員による遺産分割協議へ逆戻りする
・確実な解決策: あらかじめ「妻が先に死亡した場合は長男へ」という予備の受け皿(予備的遺言)を明記しておく
・完成度を高めるコツ: 遺言執行者についても予備の指定をしておくことで、どのような事態でも手続きが滞らない体制を作る
予備的遺言は、誰にでも起こり得る「万が一の先立たれ」に対する極めて費用対効果の高い保険です。
お手持ちの遺言書やこれから作成する遺言書にこの「予備の一文」が入っているか、ぜひ一度見直してみましょう。
「自分が書いた遺言書(または実家の遺言書)に抜け漏れがないか心配」な方へ
「昔作った遺言書があるけれど、妻に先立たれた場合のことが書かれているか不安」
「せっかく書いた遺言書が、無効になって家族が揉めてしまう事態だけは絶対に避けたい」
遺言書は「一文の抜け漏れ」があるだけで、いざという時に効力を失い、ご家族が面倒な裁判所の手続きや遺産分割協議に巻き込まれてしまうことがあります。
特に「受取人の先立たれ」への備え(予備的遺言)は、実務で非常に多く見落とされる落とし穴の一つです。
当事務所(静岡県浜松市)では、2,000件超の相続・遺言実務に携わってきた司法書士が、お手持ちの遺言書のリーガルチェック(点検)から、予備的遺言を含めた確実な遺言書のリライト・作成サポートまで丁寧に対応いたします。
ご家族の未来を守る完璧な遺言書にするために、まずは無料相談でお気軽にお悩みをお見かせください。
作成日:2026年8月7日
執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040
※本記事は、2026年8月7日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。


