コラム

相続人以外にも遺したい(世話になった嫁・内縁・孫):遺贈の書き方と注意点

献身的に介護をしてくれた長男の妻。

籍は入れていないが長年連れ添ったパートナー。

かわいい孫。

——これらの人は、どれだけ近しくても法律上の相続人ではありません

遺言がなければ、原則として1円も渡せないのです。

想いを実現する唯一の確実な手段が「遺贈」です。

書き方と注意点を解説します。

 

大原則:「相続させる」ではなく「遺贈する」

相続人以外に財産を遺すときの動詞は「遺贈する」です。

「相続させる」は相続人にしか使えません。

受け取る人は氏名+生年月日+住所(または続柄)で確実に特定します。

第◯条 遺言者は、次の預金を、長男の妻 名波美咲
    (平成◯年◯月◯日生、住所:浜松市◯◯区…)に遺贈する。
    ◯◯銀行◯◯支店 普通預金 口座番号1234567

 

注意点1:遺言執行者の指定はワンセット

相続人以外への遺贈は、相続人にとって「自分の取り分が減る」出来事です。

その相続人たちに手続きの協力(不動産登記や預金解約への関与)を求めるのは、現実には期待できません。

遺言執行者を指定しておけば、執行者が相続人の関与なしに遺贈を実行できます

相続人以外への遺贈がある遺言に執行者の指定がないのは、設計として不完全と言い切れます。

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注意点2:遺留分に食い込まない配分にする

遺贈は自由ですが、相続人の遺留分を侵害すると、受遺者(もらった人)が遺留分侵害額請求の相手方になります。

お世話になったお嫁さんに遺したはずが、義兄弟から金銭請求を受ける——という酷な事態を招かないよう、遺留分を試算した配分にしてください。

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注意点3:税金は「相続人より重い」と知っておく

相続人以外が遺贈を受けると、相続税の2割加算の対象になります(孫養子や代襲相続人でない孫も同様)。

また不動産の遺贈では、登録免許税が相続人の5倍(2%)、不動産取得税もかかります。

「不動産よりも現金・預金で遺す」方が、受け取る側の負担が軽くなることが多いのが実務感覚です。

税額の詳細は税理士と連携して確認します。

 

ケース別の補足

長男の妻へ

2019年に「特別寄与料」制度ができ、介護に貢献した親族が相続人に金銭を請求できるようになりました。

しかし請求には期限があり、金額も協議・調停次第と不安定です。

遺贈で明確に遺す方が確実であり、特別寄与料は遺言がなかった場合の補助線と考えるべきです。

内縁のパートナーへ

内縁関係には相続権が一切ありません。

遺贈が事実上唯一の手段です。

自宅に住み続けてもらいたい場合は、自宅の遺贈または居住関係の設計(使用貸借の設定等)まで踏み込んだ検討が必要です。

孫へ

孫は(代襲相続の場合を除き)相続人ではありません。

教育資金として現金を遺贈する例が多く、未成年の孫への遺贈では親権者が管理することになる点も踏まえて設計します。

 

受け取ってもらえるかの確認も

遺贈は放棄できます。

突然の遺贈は受遺者を戸惑わせ、親族との軋轢を心配して放棄されることさえあります。

生前にさりげなく意向を伝えておくことも、想いを実現する大切な準備です。

 

まとめ

相続人以外へ遺す遺言の型は、「遺贈する」の文言+受遺者の確実な特定+遺言執行者の指定+遺留分と税への配慮。この4点が揃って初めて、想いは確実に届きます。誰にどれだけ、の前に、まず「どう書けば届くか」をご相談ください。


作成日:2026年8月6日

執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040

※本記事は、2026年8月6日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。

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