相続放棄した人は法定相続情報一覧図にどう書く?「載せたまま」で正しい理由

「長男は相続放棄をした。もう相続人ではないのだから、一覧図から外して作ればいいのか」
直感的にはそう思えますが、答えは逆です。
相続放棄をした人も、法定相続情報一覧図には記載したままにします。
外して作ると、法務局で補正(修正)を求められます。
この記事では、その理由と、放棄がある場合の手続きの進め方を解説します。
理由:一覧図は「死亡時点の法定相続人」を写した書類だから
法定相続情報一覧図が証明するのは、被相続人が亡くなった瞬間に、法律上誰が相続人だったかです。
相続放棄は、亡くなった後に家庭裁判所へ申述して行うものです。放棄をすると法律上は「初めから相続人でなかった」扱いになりますが、一覧図の制度上は、放棄の事実を図に反映させない取り扱いになっています。
放棄したかどうかは戸籍に載らず、法務局(登記官)が戸籍から確認できる事実ではないからです。
同じ理由で、遺産分割の内容や、相続欠格・廃除なども一覧図には表れません。
一覧図は「相続人の候補の全体像」を示す書類だと考えてください。
では、放棄したことはどうやって証明する?
手続き先(銀行・法務局など)には、一覧図とあわせて、家庭裁判所が発行する相続放棄申述受理証明書(または受理通知書。提出先により取り扱いが異なります)を提出します。
つまり、役割分担はこうなります。
- 一覧図:死亡時点の法定相続人はこの人たちです
- 相続放棄申述受理証明書:そのうち、この人は放棄しました
この2つをセットで出すことで、「実際に遺産を承継する相続人」が手続き先に伝わる仕組みです。
注意:放棄で「相続人の順位」が変わる場合
放棄がある場合に本当に気を付けるべきは、書き方よりもこちらです。
相続放棄をした人は初めから相続人でなかった扱いになるため、次の順位へ相続権が移ることがあります。
- 子ども全員が放棄 → 第2順位の父母(直系尊属)へ
- 父母もいない・放棄 → 第3順位の兄弟姉妹へ
たとえば「借金があるので子ども全員が放棄した」場合、亡くなった方のご兄弟に相続権が回ります。
この場合、兄弟姉妹を相続人とする一覧図を作り直す(別途申出する)必要が出てきますし、必要な戸籍も大幅に増えます。
ご兄弟の側は、突然自分が(借金の)相続人になったことを知らないままのこともあります。
放棄が絡む相続は、家族全体への影響を見通して進めることが大切です。
よくある質問
Q. 放棄した本人が申出人になれますか?
放棄により初めから相続人でなかった扱いになるため、申出人にはなれないと考えてください。
他の相続人が申出人になります。
Q. これから放棄するか迷っている段階です。一覧図は作っていい?
一覧図の作成自体は可能ですが、放棄には「相続開始を知ってから3か月」という期限があります。
放棄の判断が先です。
財産に手を付けると放棄できなくなる場合もあるため、迷っている段階での行動は慎重に。
Q. 放棄した人の分、他の人の相続分が増えたことは一覧図でわかる?
わかりません。
一覧図は相続分の計算結果を証明する書類ではないため、手続き先が受理証明書とあわせて判断します。
まず、放棄を反映しない「全体図」を作りましょう
一覧図の下書きは、放棄の有無にかかわらず、死亡時点の相続人全員を入れて作ります。
相続サプリの「法定相続情報一覧図 かんたん作成アプリ」をご利用ください。
放棄が絡む相続は、全体設計からご相談を
相続放棄が関わる相続は、「誰が最終的な相続人になるのか」「どの順番で手続きすべきか」という設計そのものが難所です。
書類の書き方の前に、一度全体像のご相談をおすすめします。
放棄の期限が迫っている場合は、お急ぎでご連絡ください。
ご相談のお申し込み・お問い合わせ
公開日:2026年8月4日
執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040
※本記事は、2026年7月28日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。


