法定相続情報一覧図が使えない手続きもある:遺産分割・相続放棄は証明されない

法定相続情報一覧図は「戸籍の束の代わりになる便利な書類」として知られるようになりました。
それ自体は正しいのですが、便利さが強調されるあまり、「一覧図さえあれば相続手続きは全部できる」という誤解も生まれています。
実際には、一覧図には明確な守備範囲があります。
この記事では、一覧図が「証明できないこと」と、その場合に必要な書類を整理します。
大原則:一覧図が証明するのは「法定相続人の範囲」だけ
一覧図は、被相続人が亡くなった時点で、法律上の相続人が誰かを証明する書類です。
それ以上でも以下でもありません。
言い換えると、次のことは一切証明しません。
- 誰が、どの財産を、どれだけ相続することになったか(遺産分割の内容)
- 相続放棄をした人がいるかどうか
- 遺言があるかどうか、その内容
- 相続人の間で争いがあるかどうか
証明されないもの1:遺産分割の内容
「この不動産は長男が相続する」「預金は長女が受け取る」——こうした分け方は、相続人の話し合い(遺産分割協議)で決まります。
一覧図はこの内容に関知しないため、不動産の相続登記や預金の払い戻しでは、一覧図に加えて遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書(または遺言書)が必要です。
「一覧図を持って銀行へ行ったのに、その場で手続きできなかった」というのは、たいていこのパターンです。
証明されないもの2:相続放棄
相続放棄をした人も、一覧図には記載されたままです。
放棄の事実は、家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書等で別途証明します。
逆に言えば、一覧図に載っている人が本当に承継するとは限らない、ということです。
手続き先はこの点を知っているので、放棄がある場合は必ず追加書類を求めてきます。
証明されないもの3:遺言の内容
遺言で相続分の指定や遺贈がされている場合、実際の承継は遺言の内容に従います。
この場合は遺言書(自筆証書なら検認済みのもの、または法務局保管の証明書、公正証書遺言なら正本・謄本)が主役です。
一覧図は相続人確認の補助として使われます。
そもそも一覧図を「受け付けていない」提出先もまれにある
主要な金融機関・官公署のほとんどは一覧図に対応していますが、ごく一部の提出先や手続きでは、従来どおり戸籍一式の提出を求められることがあります。
手続き前に「法定相続情報一覧図で代用できますか」と確認しておくと確実です。
また、続柄を「子」とだけ記載した一覧図は、相続税の申告など一部の手続きで使えないことがあります。
戸籍どおりの続柄(長男・長女・養子など)で作っておくと、使い道が狭まりません。
「できること・できないこと」まとめ
| 一覧図で足りる? | 追加で必要になる主な書類 | |
|---|---|---|
| 相続人が誰かの証明 | ○ | — |
| 相続登記(法定相続分どおり) | ○ | — |
| 相続登記(遺産分割による) | △ | 遺産分割協議書+印鑑証明書 |
| 預貯金の払い戻し | △ | 銀行所定の相続届、遺産分割協議書または遺言、印鑑証明書 |
| 相続放棄がある場合 | △ | 相続放棄申述受理証明書等 |
| 遺言がある場合 | △ | 遺言書(検認済み等) |
○=一覧図が中心的役割 △=一覧図+追加書類
誤解なく、最短ルートで進めるために
一覧図は「相続手続きのパスポート」ですが、パスポートだけで旅は完結しません。
ご自身の相続で何が追加で必要かは、財産の内容と家族の状況で決まります。
一覧図の下書きは、相続サプリの「法定相続情報一覧図 かんたん作成アプリ」で無料作成できます。
「うちの場合、一覧図のほかに何が必要か」を知りたい方は、財産と家族構成をうかがえば、必要書類の全体像をご案内できます。
遺産分割協議書の作成から相続登記まで、一括でのご依頼も可能です。
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公開日:2026年8月5日
最終更新日:2026年7月28日
執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040
※本記事は、2026年7月28日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。


