コラム

内縁・未入籍のパートナーが認知症になったら?家族同然でも財産管理はできません

「もし私が先に認知症になったら、この人が何とかしてくれると思っています」

長年一緒に暮らしているパートナーがいれば、そう考えるのは自然なことかもしれません。

病院への付き添いも、日々の買い物も、健康状態の把握も、家族以上に支え合っている方は少なくありません。

それでも、婚姻届を出していない内縁・事実婚・未入籍のパートナーの場合、長年一緒に暮らしているからといって、相手の財産を当然に管理できるわけではありません。

未入籍パートナーの問題では「亡くなった後の相続」が注目されがちですが、むしろ亡くなる前に認知症になったらどうするのかを早めに考えることが大切です。

 

例えば、こんな二人だったら

Aさん68歳、Bさん64歳。二人は20年近く一緒に暮らしていますが、婚姻届は提出していません。

Aさんには前婚の子どもが2人いますが、遠方で普段の交流はほとんどありません。

Aさん名義の自宅で暮らし、預貯金も主にAさん名義です。

ある日、Aさんに認知症の症状が現れ、銀行や契約の手続きを一人で行うことが難しくなりました。

Bさんは「20年間そばにいるのだから、これからは私がお金を管理すればよい」と思うかもしれません。

しかし、そう簡単ではありません。

 

パートナーだから銀行口座を自由に管理できるわけではありません

Aさん名義の預貯金は、あくまでAさんの財産です。

生活を共にしているだけでは、Bさんが次の行為を当然にできるわけではありません。

  • 預金を自由に引き出す
  • 定期預金を解約する
  • Aさんに代わって契約する
  • Aさん所有の不動産を売却する

これは法律上の夫婦や親子でも、家族関係だけで本人の財産について当然に代理権を持つわけではない点に注意が必要です。

未入籍パートナーの場合は、「家族同然だから当然に扱われるだろう」という思い込みとのギャップが特に大きくなりやすいでしょう。

 

「遺言を作ってあるから大丈夫」でもありません

Aさんが「自宅をBさんに遺贈する」という遺言を作っていても、それだけでは認知症になってから亡くなるまでの財産管理は解決できません。

遺言は原則として、亡くなった後の財産の行き先を定めるものです。

認知症になった後に、誰がお金を管理し、施設入所の契約を支援し、必要に応じて自宅の処分を行うかという問題には、別の備えが必要です。

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認知症になった後には成年後見制度があります

本人の判断能力が低下し、自分で財産管理や契約を行うことが難しくなった場合には、成年後見制度を利用することがあります。

家庭裁判所が成年後見人等を選任し、本人の財産管理や法律行為を支援します。

ただし、何も準備していなければ、本人が希望するパートナーが必ず成年後見人に選ばれるとは限りません。

法定後見制度では、家庭裁判所が個々の事情に応じて適任者を選任します。

 

元気なうちだからできる「任意後見」

そこで検討したいのが任意後見契約です。

本人に十分な判断能力があるうちに、誰に任意後見人になってもらうか、将来どのような事務を任せるかを契約で決めておく制度です。

任意後見契約は公正証書で締結し、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると効力が生じます。

「自分が判断できなくなったら、信頼しているこの人にお願いしたい」という意思を、元気なうちに法律上の形にできます。

 

元気な今から認知症になった後までつなげる

任意後見は契約を作った日から直ちに始まる制度ではありません

。元気なうちから財産管理を手伝ってほしい場合には、財産管理等の委任契約と任意後見契約を組み合わせる方法も検討します。

  1. 元気な時期:財産管理等の委任
  2. 判断能力が低下:任意後見
  3. 死亡後:遺言による相続・遺贈

このように、時間の流れに沿って準備することが大切です。

 

未入籍パートナーだからこそ「誰に任せたいか」を決めておく

前婚の子どもとは長年別々に暮らし、自分の生活や財産を最も理解しているのはパートナーというケースもあります。

しかし「何かあったらあなたにお願いしたい」と口頭で伝えるだけでは、判断能力を失った後に希望が実現するとは限りません。

誰を信頼し、誰に何を任せたいのかを、判断能力があるうちに形にしておくことが重要です。

 

自宅の問題にも認知症は関係します

Aさんが認知症になり、介護施設へ入るためにAさん名義の自宅を売却して費用を用意する必要が生じることがあります。

Aさんに売却契約に必要な判断能力がなく、Bさんにも代理権がなければ、手続きを進めることはできません。

自宅を誰に残すかという相続対策と、認知症になったとき誰が管理するかという認知症対策をセットで考える必要があります。

 

認知症対策×相続対策の「W対策」

「亡くなったとき」だけでなく、「その前に判断能力が低下したらどうなるか」まで一緒に考えるのが、認知症対策と相続対策のW対策です。

生きている間に考えること

  • 誰が財産を管理するのか
  • 誰が生活を支えるのか
  • 誰に契約手続きを任せるのか
  • 自宅や預貯金をどう管理するのか

亡くなった後に考えること

  • パートナーに何を残すのか
  • 自宅をどうするのか
  • 前婚の子どもに何を残すのか
  • 遺留分をどう考えるのか
  • 誰に死後の手続きを任せるのか

この両方を考えて初めて、パートナーを守る準備になります。

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「籍を入れていないからこそ」確認したい6つの質問

  1. 自分が認知症になったら、誰に財産管理を任せたいですか?
  2. その人に「任せたい」と話しただけで終わっていませんか?
  3. 預貯金や自宅など、大切な財産は誰の名義ですか?
  4. 施設入所などで大きなお金が必要になったら、誰が手続きしますか?
  5. 自分が亡くなった後、パートナーに何を残したいですか?
  6. 前婚のお子さんなど、法定相続人との関係をどう考えていますか?

 

元気な今だから、選べることがあります

判断能力が失われてからでは、自分で新たに任意後見契約を結んだり、希望どおりの遺言を作ったりすることが難しくなる場合があります。

元気な今なら、誰に何を任せ、誰に何を残すのかを自分で決められます。

名波司法書士事務所では、財産管理に関する契約、任意後見、遺言、自宅の承継、前婚のお子さんとの関係、遺留分、死後の手続きをばらばらに考えず、「元気な今」から「認知症になったとき」、そして「亡くなった後」までを一本の時間軸で整理するW対策をご一緒に考えています。

「もし私が認知症になったら、この人は困らないだろうか?」

そう思ったときが、準備を始めるタイミングです。

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作成日:2026年9月8日

執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040

※本記事は、2026年9月8日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。

※本記事は一般的な法律制度について説明したものです。任意後見契約、財産管理、成年後見制度、不動産処分等について必要となる手続きは、本人の判断能力や契約内容、財産状況などによって異なります。個別のケースについては専門家へご相談ください。

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