内縁の妻・夫に相続権はある?何年一緒に暮らしても相続人にならない理由と対策

「もう20年以上一緒に暮らしています。私たちは夫婦と同じようなものですが、相続も妻と同じようにできますよね?」
このように思われている方は、意外と少なくありません。
一緒に生活し、生活費を負担し合い、周囲から夫婦として見られていても、婚姻届を提出していなければ、相続については法律上の夫婦とは大きな違いがあります。
内縁・事実婚・未入籍のパートナーには、原則として法定相続権はありません。
一緒に暮らした期間が5年でも、10年でも、30年でも、この基本的な扱いは変わりません。
今回は、内縁・未入籍パートナーの相続で特に注意したいポイントと、元気なうちにできる対策を解説します。
「長く一緒に暮らしていれば妻と同じ」ではありません
AさんとBさんが20年以上一緒に暮らしていて、婚姻届は提出していないとします。
Aさんには前婚の子どもが2人おり、自宅と預貯金はAさん名義です。
Aさんが遺言を残さず亡くなると、基本的にはAさんの子どもたちが相続人となり、Bさんは法定相続人にはなりません。
「夫婦としてどのように暮らしてきたか」と、「法律上誰が相続人になるか」は別の問題です。
何年暮らしても相続権が発生する制度はありません
一定期間一緒に暮らせば、事実上の妻や夫として相続権が生まれるわけではありません。
30年間一緒に暮らしていても、婚姻届を提出していなければ、内縁パートナーが自動的に法定相続人になることはありません。
「長年一緒にいるから大丈夫」ではなく、長年一緒にいるからこそ、この先のことを法的に整理しておくことが重要です。
一番困りやすいのは「住まい」
Aさん名義の自宅で暮らしていた場合、Aさんが亡くなれば自宅も相続財産となります。
遺言がなければ、Aさんの子どもたちが相続します。
Bさんが「ここは20年間、私の家でもありました」と思っていても、所有権を当然に取得できるわけではありません。
次のような事情があれば、住まいの問題が深刻になることがあります。
- 相続人が家を売却したい
- 相続財産を整理・現金化したい
- パートナーと相続人の交流がほとんどない
- 前婚の家族との関係がよくない
「まさか自分が住んでいる家で困るとは思わなかった」という事態を避けるため、事前の準備が必要です。
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預貯金も当然には受け取れません
Aさん名義の預貯金も原則として相続財産です。
「二人で貯めてきたお金」という感覚があっても、口座名義や実際の財産関係によって法律上の扱いは変わります。
内縁・未入籍カップルは、誰の名義で、どの財産を持っているのかを元気なうちに確認しておきましょう。
パートナーに財産を残すなら「遺言」が重要
内縁の妻や夫に財産を残すための重要な方法が遺言です。
例えば「自宅をBさんに遺贈する」「預貯金のうち1,000万円をBさんに遺贈する」などと指定できます。
内縁パートナーは法定相続人ではありませんが、遺言によって財産を受け取れます。
自動的には相続できないからこそ、自分の意思を遺言という形で残す必要があります。
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子どもがいる場合は「遺留分」まで考える
亡くなる方に子どもがいる場合、子どもには原則として遺留分があります。
「全財産を内縁の妻に遺贈する」という遺言を作っても、子どもから遺留分侵害額の請求を受ける可能性があります。
パートナーに何を残すかだけでなく、子どもに何を残すかも一緒に考えることが重要です。
パートナーと子どもの関係や交流状況によっても、適切な設計は変わります。
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相続人がいなくても自動的に相続できるわけではありません
子ども、親、兄弟姉妹などの相続人がいない場合でも、内縁パートナーが自動的に法定相続人になるわけではありません。
相続人がいないことが確定すると、家庭裁判所の手続きを経て、亡くなった方と特別な縁故があった方へ残った相続財産の全部または一部を分与する制度があります。
ただし、内縁の妻や夫だから当然に取得できる制度ではなく、財産を受け取れる保証もありません。
「相続人がいないから最後はパートナーがもらえる」と考えず、元気なうちに遺言を準備する方が確実です。
税金も法律上の妻・夫とは違います
遺言によって内縁パートナーが財産を取得し、相続税が発生する場合、法律上の配偶者や一親等の血族以外の人は原則として相続税額の2割加算の対象になります。
また、法律上の配偶者に認められる「配偶者の税額軽減」は、婚姻届を提出していない内縁関係の方には適用されません。
「渡せるかどうか」だけでなく、「受け取った後の税金」まで考え、必要に応じて税理士と連携することが大切です。
忘れてはいけない「認知症」の問題
未入籍パートナーは、相続だけを考えるのでは不十分です。
Aさんが亡くなる前に認知症になっても、長年一緒に暮らすBさんが当然に代理人になれるわけではありません。
Aさん名義の預貯金を自由に管理したり、不動産を自由に売却したりすることもできません。遺言は亡くなった後の財産の行き先を決めるものであり、認知症になった後の財産管理を解決するものではありません。
そこで、次の仕組みを組み合わせて検討します。
- 財産管理委任契約
- 任意後見契約
- 遺言
- 必要に応じた生命保険など
生きている間の認知症対策と、亡くなった後の相続対策を一緒に考えることが重要です。
当事務所では、これを「認知症×相続のW対策」と考えています。
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未入籍カップルに確認してほしい5つのこと
- どちらかが亡くなった場合、法律上の相続人は誰ですか?
- 今住んでいる家は誰の名義ですか?
- パートナーにどの財産を残したいですか?
- 前婚のお子さんなど、相続人との関係はどうですか?
- どちらかが認知症になったとき、誰に財産管理を任せたいですか?
すぐに答えられなくても構いません。
「考えたことがなかった」という項目があれば、そこが対策を始めるポイントです。
「籍を入れていない」ことが問題なのではありません
内縁や事実婚という生き方そのものが問題なのではありません。
大切なのは、自分たちが選んだ生き方と、法律上の扱いに違いがあることを知っておくことです。
「籍を入れない」という選択によって生じる法律上の空白を、遺言や任意後見などによって埋めておく。
それがお互いを守ることにつながります。
名波司法書士事務所では、パートナーとの関係、前婚のお子さんとの関係、自宅、預貯金、遺留分、将来の認知症、亡くなった後の生活まで整理し、その方に合った方法を一緒に考えています。
「私たちは籍を入れていないけれど、お互いのことはきちんと守りたい。」
そう思ったときが、準備を始めるタイミングです。
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作成日:2026年9月8日
執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040
※本記事は、2026年9月8日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。
※本記事は一般的な法律・税務制度について説明したものです。具体的な相続人、財産関係、遺留分、税務上の取扱いなどは個々の事情によって異なります。個別のケースについては司法書士・弁護士・税理士等の専門家へご相談ください。


