預けた遺言書を書き直したい・撤回したいとき:変更届と撤回の手続き

「法務局に預けたら、もう変えられないのでは」——保管制度をためらう理由としてよく聞く誤解です。
実際には、遺言はいつでも書き直せますし、保管の撤回も無料でできます。
ケース別に正しい手順を解説します。
ケース1:住所・氏名・本籍が変わった → 変更届(無料)
引っ越しや改姓があったときは、法務局に変更届を出します。
手数料は無料で、郵送でも提出できます。
この届出は遺言の内容を変えるものではなく、法務局が遺言者と連絡を取り、死亡の事実を正確に把握するための情報更新です。
通知の仕組みを機能させるためにも、忘れず届け出てください。
なお、受遺者や通知先に指定した人の住所変更も届出の対象です。意外に忘れられやすいポイントです。
ケース2:遺言の内容を変えたい → 新しい遺言を作る
ここが最重要です。
保管中の遺言書は部分的な訂正や差し替えができません。
内容を変えたいときの正解は、新しい日付で遺言を作り直すことです。
民法のルールで、内容が抵触する部分は後の日付の遺言が優先します。
したがって、新しい遺言を作れば古い遺言は(抵触する範囲で)自動的に効力を失います。
理論上は古い遺言を預けたままでも新しい遺言が勝ちますが、死後に複数の遺言が出てくると家族が混乱し、解釈争いの火種になるため、実務では次の手順をおすすめします。
- 新しい遺言書を作成する
- 古い遺言書の保管を撤回して返してもらう
- 古い遺言書を破棄する
- 新しい遺言書を保管申請する
関連記事
書いた遺言書を訂正したいとき:方式を守らないと訂正が無効になる
ケース3:保管をやめたい → 撤回(無料)
保管申請の撤回は手数料無料です。
ただし、①遺言者本人が、②預けた遺言書保管所(全国どこでもは不可)に、③予約のうえ出頭する必要があります。
撤回すると遺言書の原本が返却されます。
注意すべきは、撤回=遺言の効力がなくなる、ではないことです。
撤回はあくまで「法務局に預けるのをやめる」手続きで、返してもらった遺言書自体は(破棄しない限り)自筆証書遺言として有効なままです。
逆に、遺言自体を撤回したいなら、返却後に破棄するか、撤回の意思を記した新しい遺言を作ります。
保管制度と「書き直しやすさ」の相性
遺言は一度作って終わりではなく、財産や家族の変化に応じて見直すものです。
保管制度は撤回無料・再保管3,900円ですから、書き直しのコストは低く抑えられています。
「まず今の時点のベストで作って預け、変化があれば作り直す」——この運用が保管制度の賢い使い方です。
関連記事
自筆証書遺言書保管制度とは?手数料3,900円で法務局に預けるメリット
よくある質問
Q. 撤回は家族が代わりにできますか?
A. できません。
保管に関する手続きは生前はすべて本人のみです。本人の判断能力が失われると撤回も書き直しもできなくなるため、見直しは元気なうちに。
Q. 新しい遺言は公正証書でもいいですか?
A. 構いません。
方式が違っても後の遺言が優先します。
自筆+保管で始めて、後に公正証書へ格上げする流れは実務でもよくあります。
まとめ
法務局の遺言書保管制度は「一度預けたら変更できない」ものではなく、ライフステージの変化に合わせて低コストで柔軟に更新・見直しができる仕組みです。
-
住所や氏名の変更: 無料の「変更届」を提出する(郵送可)
-
内容の書き換え: 新しい遺言書を作成し、古い遺言書を撤回(無料)・破棄して再保管する
-
保管をやめる: 本人が預けた法務局に出頭して「撤回(無料)」する
撤回手続きは本人出頭が必要なため、認知症等で判断能力が低下する前に見直すことが大切です。
「今のベストで作成し、変化に合わせて更新する」という柔軟な姿勢で制度を活用しましょう。
「昔書いた遺言書の内容を変更したい」あなたへ
「状況が変わったので、預けてある遺言書を書き直したい」
「撤回手続きや新しい遺言書の再保管を二度手間なく進めたい」
遺言は一度作成して終わりではなく、ご家族や財産の状況変化に合わせて見直すものです。
古い遺言書を残したまま放置すると死後の混乱につながるため、正しい手順で「撤回・破棄・再保管」を行うことが重要です。
当事務所(静岡県浜松市)では、2,000件超の相続・遺言実務に携わってきた司法書士が、遺言書の書き直し・見直し相談はもちろん、法務局での撤回・再申請の準備までスムーズにサポートいたします。
ご自身の最新の想いを正確に遺すために、まずは無料相談でお気軽にお悩みをお聞かせください。
作成日:2026年8月5日
執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040
※本記事は、2026年8月5日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。


