コラム

遺言書保管制度なら検認が不要:家族の手間はどれだけ違うか

自筆証書遺言書保管制度の実利として、紛失防止と並ぶ最大の柱が「検認不要」です。

検認と聞いてもピンと来ない方が多いのですが、実は残された家族にとって1〜2か月と数万円分の手間がかかる手続きです。

保管制度を使った場合と使わなかった場合で、死後の家族の負担がどれだけ違うかを具体的に比較します。

 

そもそも検認とは

自宅で見つかった自筆証書遺言は、そのままでは相続登記にも銀行手続きにも使えません。

まず家庭裁判所に申立てをして、相続人立会いのもと遺言書を開封・確認する「検認」を経る必要があります。

検認を怠って手続きを進めることはできず、勝手に開封すると過料の対象にもなります。

 

検認にかかる家族の負担

検認の申立てには、遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍と相続人全員の戸籍が必要です。

戸籍集めだけで数週間かかることも珍しくありません。

申立てから検認期日までさらに1か月前後待ち、期日には家庭裁判所へ出向きます。

自宅保管の自筆遺言 保管制度利用
家裁への申立て 必要 不要
出生〜死亡の戸籍収集 検認のために必要 証明書請求時に必要(※)
待ち時間 申立て準備+期日まで1〜2か月 証明書取得のみ
相続手続き開始まで 検認後にようやく開始 すぐ開始できる

(※)保管制度でも遺言書情報証明書の請求に戸籍関係書類は必要です。

「戸籍集めがゼロになる」わけではなく、「家裁の手続きと待ち時間がなくなる」のが正確な違いです。

法定相続情報一覧図を作れば戸籍の束の使い回しも効率化できます。

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検認を「省略」しているのではなく「不要」な理由

検認の目的は、遺言書の状態をその時点で確定させ、偽造・変造を防ぐことにあります。

保管制度では、法務局が保管開始時点から原本と画像データを管理しているため、偽造・変造の余地がそもそもなく、検認の目的が既に達成されているのです。

だから制度上、検認が不要とされています。

公正証書遺言が検認不要なのと同じ理屈です。

注意:検認不要でも「有効性のお墨付き」ではない

検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。

同様に、保管制度で検認不要になっても、遺言の内容が有効という保証はありません

内容に問題があれば、保管された遺言でも死後に争いになり得ます。

形式の保全と内容の有効性は別問題です。

 

残された家族の時間の価値

相続手続きには期限があります。

相続放棄は3か月、相続税申告は10か月、相続登記は3年。検認の1〜2か月は、この限られた時間から差し引かれます。

特に相続放棄を検討すべき事案では、検認待ちの間に3か月の熟慮期間が迫る切実なケースもあります。

3,900円の保管手数料は、家族の1〜2か月を買う費用と考えると、極めて安い投資です。

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まとめ

自筆証書遺言書保管制度の「検認不要」というメリットは、残されたご家族から「1〜2か月の時間待ち」と「家庭裁判所での面倒な手続き」を丸ごと取り払ってくれる大きな実利です。

  • 制度の強み: 開封・検認を待たずに、死後すぐに預金解約や相続登記などの手続きに着手できる

  • 重要な注意点: 検認不要=「遺言の内容が法的に有効」と保証されたわけではないため、内容の点検は別途必要

遺言書は「書く人の手間」だけでなく「使うご家族の手間」まで考えて設計することが大切です。

保管制度や公正証書遺言を上手に活用し、大切なご家族の負担を最小限に抑えましょう。

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自筆証書遺言書保管制度を利用すれば「検認不要」でスムーズに手続きをスタートできますが、遺言の内容自体に不備や偏りがあると、死後に家族間で争いが生じてしまうおそれがあります。

当事務所(静岡県浜松市)では、2,000件超の相続・遺言実務に携わってきた司法書士が、ご家族の負担を最小限にする遺言の書き方・保管制度の活用提案はもちろん、死後の相続登記や証明書取得の手続きまで一貫してサポートいたします。

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作成日:2026年8月5日

執筆・監修:司法書士 名波直紀
名波司法書士事務所 代表
静岡県司法書士会所属・登録番号517
簡裁訴訟代理等関係業務認定番号108040

※本記事は、2026年8月5日現在の法令・公的機関の公表情報に基づいて作成しています。法令や制度は改正されることがありますので、実際の手続にあたっては最新情報をご確認ください。

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