株式の相続に関してよくある勘違い!準共有の仕組みとトラブルを防ぐ手続きの流れ

株式をお持ちの方が亡くなった場合、遺言書があれば、原則としてその内容に従って承継手続きを進めます。
遺言書がない場合は、相続人全員で、株式を誰が取得するかを話し合うことになります。
ここで、株式の相続について、よくある勘違いがあります。
それは、相続人が複数いる場合、亡くなった方の株式が、法定相続分に応じた「株数」に自動的に分かれるというものです。
例えば、100株を持っていた方が亡くなり、相続人が妻、長男、長女の3人だったとします。
法定相続分は、妻が2分の1、長男と長女がそれぞれ4分の1です。
しかし、相続が始まっただけで、
妻が50株
長男が25株
長女が25株
と自動的に分かれるわけではありません。
遺産分割が終わるまで、原則として100株の一株一株について、妻が2分の1、長男と長女がそれぞれ4分の1の割合で権利を持つ状態になります。
このように、株式という権利を複数の相続人が共同で持つ状態を「準共有」といいます。
準共有となった株式の議決権はどうなる?
準共有となっている株式について議決権などを行使する場合は、原則として、相続人の中から権利を行使する人を1人定め、会社に通知する必要があります。
相続人の間で権利を行使する人を決められないまま株主総会を迎えると、議決権を適切に行使できないことがあります。
上場会社の株式でも手続きが停滞する原因になりますが、特に注意が必要なのが、同族会社や中小企業の非上場株式です。
亡くなった方が会社の経営者や大株主だった場合、相続人が株式の権利行使者を決められないことによって、役員の選任や重要事項の決議など、会社の意思決定に支障が生じるおそれがあります。
株式の準共有は、単に「財産をまだ分けていない」というだけでなく、会社経営にも影響を与える可能性のある状態なのです。
準共有状態を解消するには遺産分割協議が必要
準共有状態を解消するためには、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの株式を何株取得するかを決めます。
先ほどの例であれば、
妻が50株
長男が25株
長女が25株
と分けることもできます。
一方で、長男が会社の後継者である場合には、長男が100株すべてを取得し、妻と長女は預貯金や不動産など、別の財産を取得する方法も考えられます。
どのように分けるかについて相続人全員の合意ができた場合は、その内容を遺産分割協議書に記載します。
株式の内容やおおよその価額を確認したうえで、相続財産全体のバランスや、今後の会社経営なども考慮して話し合うことが大切です。
株式の相続手続きにおける具体的な流れと証券口座の扱い
上場株式の相続手続きは、一般的に次のような流れで進みます。
-
被相続人が利用していた証券会社や金融機関を確認する
-
証券会社に死亡の連絡をする
-
残高証明書などを取り寄せる
-
相続人を確定する
-
遺言書の有無を確認する
-
必要に応じて遺産分割協議書を作成する
-
証券会社で株式の移管手続きを行う
まずは、亡くなった方がどの証券会社に口座を持っていたかを確認します。
証券会社から届いた取引報告書、配当金の通知書、郵便物、電子メール、通帳の入出金記録などが手がかりになります。
証券会社が分かったら死亡の事実を連絡し、死亡日時点で保有していた銘柄や株数などが分かる残高証明書等を取り寄せます。
証券会社によって、必要書類の名称や手続きの内容は異なります。
一般的には、次のような書類が必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 相続人の戸籍謄本
- 遺言書または遺産分割協議書
- 相続人の印鑑証明書
- 証券会社所定の相続手続き書類
- 法定相続情報一覧図
実際に必要となる書類は、遺言書の有無や遺産分割の内容、証券会社の取扱いによって異なるため、あらかじめ確認しましょう。
相続人名義の証券口座への移管
多くの証券会社では、株式を取得する相続人が、その証券会社に本人名義の証券口座を開設し、亡くなった方の口座から株式を移管します。
被相続人名義の証券口座を、そのまま相続人が使用し続けることはできません。
また、他の証券会社の口座へ直接移管できるか、いったん被相続人と同じ証券会社に相続人名義の口座を開設する必要があるかは、証券会社によって取扱いが異なります。
そのため、手続きを始める前に、次の点を証券会社へ確認することが重要です。
- 相続人名義の口座開設が必要か
- 他社口座への直接移管ができるか
- 株式を売却して現金で受け取る手続きが可能か
- 単元未満株が含まれている場合はどうなるか
- 特定口座やNISA口座の取扱いはどうなるか
通常、相続した株式を売却したり現金化したりするのは、相続人名義の口座への移管が完了した後になります。
株式の評価額は目的によって異なる
株式の「評価額」は、何のために評価するかによって異なります。
相続税申告では、税務上定められた方法によって、亡くなった日を基準に株式を評価します。
一方、遺産分割において株式をどの金額として扱うかは、相続税評価額と必ずしも同じではありません。
遺産分割では、相続人間の合意によって評価額を決めることもあります。また、協議がまとまらず、家庭裁判所で遺産分割を行う場合には、遺産分割時に近い時点の時価などが問題になることがあります。
「相続税申告のための評価」と「相続人同士で財産を公平に分けるための評価」は、目的が異なることに注意が必要です。
上場株式の相続税評価
相続税申告における上場株式の評価は、原則として、亡くなった日の最終価格を基準とします。
ただし、その価格が、次の3つの月平均額のうち最も低い価格を上回る場合には、その最も低い価格によって評価します。
- 亡くなった日の属する月の毎日の最終価格の平均額
- その前月の毎日の最終価格の平均額
- その前々月の毎日の最終価格の平均額
これは、納税者が自由に評価方法を選ぶというものではなく、相続税における上場株式の評価ルールです。
また、亡くなった日が証券取引所の休日だった場合や、権利落ち、配当落ちなどがある場合には、別の調整が必要になることがあります。
相続税申告が必要となる可能性がある場合は、税理士に確認することをお勧めします。
非上場株式・同族会社の株式を相続する場合
相続財産の中に、一般の市場で取引されていない非上場株式が含まれている場合は、より慎重な対応が必要です。
中小企業の経営者などが保有している非上場株式には、市場で日々公表される取引価格がありません。
そのため、相続税申告では、会社の規模、株主構成、純資産、利益、配当などをもとに、税務上の評価方法に従って株価を計算します。
会社の状況によって評価方法が異なるため、非上場株式の評価は非常に専門性が高い分野です。
税理士など、非上場株式の評価に詳しい専門家へ確認することを強くお勧めします。
非上場株式の相続は事業承継にも影響する
非上場株式の相続は、単なる財産の分配ではありません。
株式には、株主総会で議決権を行使し、会社の重要事項を決定する権利があります。
そのため、非上場株式を誰が承継するかは、会社の経営権を誰が引き継ぐかという「事業承継」の問題でもあります。
非上場株式が複数の相続人の準共有となり、権利行使者を決められない場合には、株主総会で議決権を行使できず、会社の意思決定に支障が生じるおそれがあります。
また、遺産分割によって株式が複数の相続人に分散すると、後継者が十分な議決権を確保できず、その後の経営が不安定になる可能性もあります。
後継者に株式を集中させる必要がある場合には、他の相続人にどの財産を渡すのかという点も含めて、生前から検討することが重要です。
株式を後継者に集中させる場合の遺留分
特定の後継者に非上場株式を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の一定の相続人に保障されている、最低限の遺産取得分です。
例えば、遺言書によって会社の株式の大部分を後継者に相続させた結果、他の相続人がほとんど財産を取得できなかった場合には、後継者が遺留分侵害額請求を受けることがあります。
遺留分侵害額請求を受けると、後継者は原則として金銭を支払う必要があります。
会社の株式は取得できても、支払いに必要な現金が不足し、会社や後継者の負担になることがあります。
対策としては、遺言書によって株式の承継先を明確にするだけでなく、次のような事項を総合的に検討することが大切です。
- 後継者以外の相続人に渡す預貯金や不動産
- 生命保険金の活用
- 遺留分への対応
- 相続税の納税資金
- 会社の定款や株主構成
- 種類株式などの会社法上の対策
- 経営承継円滑化法に基づく制度の利用可能性
非上場株式を含む相続では、司法書士、税理士、弁護士などの専門家が、それぞれの専門分野から連携して検討することが重要です。
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相続した株式を売却した場合の税金
相続した株式を売却して現金で分配する場合や、名義変更後に相続人が自分の判断で売却する場合には、相続税とは別に、売却による税金についても確認が必要です。
株式を売却して利益が出た場合は、原則として所得税・住民税の課税対象になります。
この売却による利益を、一般に譲渡所得といいます。
ただし、株式を売却したからといって、必ず確定申告が必要になるわけではありません。
例えば、源泉徴収ありの特定口座で売却した場合には、証券会社が税金を源泉徴収するため、原則として確定申告をしなくてもよいことがあります。
一方で、一般口座や源泉徴収なしの特定口座で売却した場合、他の証券口座との損益通算を行う場合、損失を翌年以降へ繰り越す場合などには、確定申告が必要または有利になることがあります。
口座の種類や他の所得・損失の状況によって取扱いが異なるため、税理士や税務署に確認しましょう。
相続した株式の取得費
株式の譲渡益は、基本的に次のような考え方で計算します。
売却代金から、株式の取得費や売却手数料などを差し引いて利益を計算します。
相続した株式の取得費は、原則として、亡くなった方がその株式を取得したときの金額を引き継ぎます。
相続税の評価額が、そのまま売却時の取得費になるわけではありません。
例えば、亡くなった方が1株1,000円で購入した株式を相続し、その後1株3,000円で売却した場合、原則として1株1,000円を取得費として譲渡益を計算します。
大昔に購入した株式などで、実際の取得費が分からないこともあります。
取得費がどうしても分からない場合には、売却代金の5%を概算取得費とすることができます。
ただし、実際の取得費よりも大幅に低い金額になることがあり、その結果、譲渡益が大きく計算され、税負担が増える可能性があります。
過去の取引報告書、証券会社の取引履歴、預金通帳、株式の名義書換時の資料などから取得費を確認できないか、十分に調査することが大切です。
なお、亡くなった方のNISA口座で保有されていた株式などについては、通常の相続とは異なる取得価額の取扱いがあります。
また、相続税を納付した人が、相続開始後の一定期間内に相続した株式を売却した場合には、納付した相続税額の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」を利用できる可能性があります。
適用条件があるため、売却前に税理士へ相談することをお勧めします。
遺産トラブルを防ぐための遺言書と事前対策
株式、預貯金、不動産など、性質の異なる財産がある場合には、遺産分割協議がまとまりにくくなることがあります。
特に、会社の株式を後継者に集中させる必要がある場合、法定相続分だけを基準に財産を分けようとすると、他の相続人との調整が難しくなることがあります。
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停や審判を利用することになり、相続人の時間的・精神的な負担も大きくなります。
こうした事態を防ぐために有効な対策の一つが、生前に遺言書を作成しておくことです。
遺言書で株式の取得者が明確に指定されていれば、原則として、その株式について改めて遺産分割協議を行わずに承継手続きを進めることができます。
証券会社や株式の発行会社における承継・名義変更手続きも進めやすくなります。
ただし、遺言書があれば、すべての問題が自動的に解決するわけではありません。
次のような場合には、別途対応が必要になることがあります。
- 遺言書に記載されていない財産がある
- 株式の銘柄や会社名などの記載が不明確
- 遺言書作成後に株式数や会社の状況が変わっている
- 遺留分を侵害している
- 遺言書の有効性について争いがある
- 相続人全員が遺言書とは異なる分け方を希望している
遺言書を作成する場合には、単に「長男に株式を相続させる」と書くだけでなく、会社の状況、他の財産、遺留分、納税資金、後継者以外の相続人への配慮まで含めて検討することが重要です。
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よくある質問とまとめ
Q. 相続税の基礎控除を超えるか分からない場合も、専門家に相談すべきですか?
A.
株式を含めた相続財産の総額が基礎控除を超える可能性がある場合や、株式の税務上の評価方法が分からない場合には、税理士へ相談することをお勧めします。
上場株式や非上場株式の評価、相続税申告の要否、税務上の特例の適用について具体的に判断することは、税理士の専門分野です。
当事務所では、相続人の確認、遺産分割協議書の作成支援、遺言書の作成、非上場会社の株式承継に伴う登記など、司法書士の業務範囲についてご相談をお受けしています。
相続税申告や株価評価が必要な場合には、必要に応じて税理士などの専門家と連携します。
Q. 遺言書があっても遺留分の請求を受ける可能性はありますか?
A. 可能性はあります。
特定の相続人にすべての株式や財産を相続させる内容の場合、他の相続人の遺留分を侵害することがあります。
その場合、株式を取得した相続人が、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
遺言書を作成する段階で、株式以外の財産の分け方や生命保険金の活用、支払いに必要な資金なども含めて検討することが大切です。
Q. 相続人同士で株式の分け方について意見が合わない場合、司法書士に交渉を依頼できますか?
A. 司法書士が、相続人の一方の代理人として他の相続人と遺産分割の交渉を行うことはできません。
相続人間で争いが生じている場合や、代理人による交渉、遺産分割調停・審判への対応が必要な場合には、弁護士への相談が必要です。
当事務所では、相続関係や財産の整理、必要書類の確認などを行い、紛争性がある場合には、必要に応じて弁護士への相談をご案内します。
まとめ
株式を持っている方が亡くなり、相続人が複数いる場合、株式が法定相続分に応じた株数へ自動的に分かれるわけではありません。
遺産分割が成立するまでは、原則として、一株一株が相続人全員の準共有となります。
準共有中の株式について議決権などを行使するためには、原則として権利を行使する人を1人定め、会社へ通知する必要があります。
特に非上場会社では、株式の準共有や分散が会社経営に大きな影響を与えることがあります。
株式の相続では、次の点を整理することが重要です。
- 遺言書があるか
- 相続人は誰か
- どの証券会社や会社の株式を保有しているか
- 上場株式か非上場株式か
- 誰が株式を取得するか
- 会社の後継者は誰か
- 遺留分や納税資金に問題がないか
- 株式を売却する予定があるか
株式の相続は、相続手続き、会社法、税務、事業承継など、複数の問題が関係します。
早い段階で状況を整理し、必要に応じて司法書士、税理士、弁護士などの専門家へ相談することが、トラブルを防ぐことにつながります。
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